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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
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56/62

#55 悪魔

「なんで…なんで!?」

そうクラージュ君が、好奇心と恐怖の入り交じったような声をだし、僕の肩を掴んだ時。

 

───僕の鼻スレスレに何かが飛んできた。

 

「!?」

手のひらの力が緩み、マッチ箱を床に落とす。

「あー、当たらなかった。惜しかったですねぇ」

さっきまで魔女さんしか見ていなかったはずのロンが、今はしっかりとこちらを認識していた。それも、信じられない量の殺気を放ちながら。


「その魔眼レンズはどちらから?普通の人が手に入るものでは無いですけど。貴方が盗んだということでよろしいでしょうか」

手のひらをこちらに向けて、魔法を放つ準備は完了している。この至近距離はマズい。

背中に冷や汗が垂れるのがわかる。

それでも、僕は震える口で返答する。


「貰ったんだ。親切な大人からね」

「……へぇ。こんな所に親切な人がいたんですね。みーんな性根が腐ってますから、驚きですよ」

「そう?ロンならすぐに思い当たる人がいると思ったんだけど……まあ、しょうがないか」

後ろに立っているクラージュ君へ、手でグレーテルを指す。

“ヘンゼルとグレーテルを守ってくれ”という心の声は見えただろうか。きっと冷静な彼なら、見えなくてもわかると思うが。

 

「何が言いたい?」

「アナタはロンじゃない。ただの欲に塗れた“悪魔”だ」

その一言で、ロンの雰囲気が一瞬にして変わる。クラージュ君達にもわかったのか、怯える声やハッとした息遣いが、背中越しに伝わってくる。


ハッピーでメルヘンなはずのお菓子の家は、僕のせいで台無し。

魔女は悪魔だったし、グレーテルは倒れてるし、ヘンゼルは捕まったまま。


さっきの攻撃で、ヘンゼルの檻が壊れているかも!と思ったが、そんなことはなく、ライオンでも入れるのかという大きさの檻は、傷一つ付いていなかった。


「その悪魔にお前はどうやって勝つんですか?読者の僕なら勝てる?一生懸命頑張る?…まさか、考えも無しあのような発言をした訳では無いですよねぇ笑?」

隠す必要がなくなると、下品な笑い声をあげながら僕を嘲笑う悪魔。ハイライトの消えた黒い目を三日月型にしながら、魔女さんを見て、目線をクラージュ君へ動かし、ヘンゼル、グレーテル……そして僕を見る。


それがまた不安を煽り、ビリビリとした嫌な雰囲気を更に際立たせる。

 

「考えなし…って言ったら、どうする?」

「ハッ……自殺願望者が」

大丈夫。いざとなれば、“主人公”が助けに来てくれるはずだから。

 

「そうだよね。ヤンキー赤ずきんさん」

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