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変異童話  作者: 偃月作
第一章、ヘンゼルとグレーテル
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#52 同じ男

クラージュside

 

「何なんですか!この人たち!」

「ロン様には近づかせん。絶対に」

「クラージュ君。もしかしたらグレーテルが危ないかもしれない」

魔法の使いすぎで、疲れている魔女さん。額に汗を滲ませながらも、何故か攻撃してくる同じ姿の男たちから、ボクを守ってくれる。

「危ないって……戻ろうにもこんな人数がいたら身動き取れませんよ!」

「……人数が減ればいいんだよね?」

 

へ?なんていうボクの間抜けな声が届く間もなく、魔女さんは何かを唱え始め、周りにキラキラが散る。

「クラージュ君、走ってね」

パチッと火花の散る音が聞こえ、次に目を開けると───

 

「グアァァ…!」

男たちが一斉に目を押さえて暴れ始めた。キラキラは周りに散ったまま、消える気配はない。

魔女さん……一体何をしたんだろう。


でも、このタイミングを逃す訳にはいかない。魔女さんと目配せをして、ドアへ一直線に走る。

「うぐっ…」


あと一歩でドアに届く──というところで、誰かに押さえつけられた。腕を固定され、馬乗りにされているのか、全く動けない。


「クラージュ君!?」

魔女さんの焦った声が聞こえる。

どうしよう。魔女さんの魔法もいつまで持つかも分からないのに……。時間だけが無情にすぎていく。抑える力は緩むことなく、ボクを押さえつけている。

「あの子のところに連れていく。動くな」

耳に届く、聞いた事のない低い声。押さえている人の声?あの子と言うのは、妹さんのことだろうか…。

「貴方は…?」


数秒の沈黙の後、その人は口を開いた。

「俺は──ロンの“恋人”だ」

 

はじめside

 

「うーん……」

小柄で11歳のヤンキー赤ずきんさんが、ギリギリ通れた穴。齢16歳の僕が通れるわけがない。この状態で通ろうとしたら、挟まって身動きが取れなくなり、終わりだ。

「しゃーない。穴開けれたんだから、大きくするのは簡単なはず!」

一人しかいない部屋の中で、えっさほいさと壁を壊す準備をしていると、コツコツと何処からか足音が聞こえてきた。


足音?と準備をしていた手を止めると、次の瞬間──


“ドカーン”

 

「!?」

急な爆風に体ごと吹っ飛ぶ。すぐ後ろに壁があったから、めちゃくちゃ飛んだ!という訳では無いが、狼男との戦いもあり、体のダメージがすごい……。


ケホケホと咳き込みながら、目を凝らして見ると、煙の中にある一つの人影。

「お前はどんだけ鈍臭いんだよ」

「は……」

これまで見たことのない男。全くの他人。

なのに…なのに……


なんで知らない奴に“鈍臭い”なんて言われなきゃならないんだ。てか、マジで誰だよ!お前!

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