#51 一人目脱出
はじめside
「こ、壊せた……」
「マジかよ…」
目の前にある、ぽっかりと穴の空いた壁。ボロボロと破片の散らばった床。足が取れていたり、欠落部分のある家具たち。
全てが、壁を破壊したことを物語っていた。
「でも、この先なんかあんのか?」
「正規ルートなのは間違いないから、何処かには繋がってると思うけど……」
「ここまで頑張って、出口が無いなんて言わせねぇぞ?」
不安を煽るように言ってくるヤンキー赤ずきんさんに、ボクは肯定も否定も出来ない。
とりあえず、この穴から出てみなきゃ分からないが、簡単に出入りできるような大きさでもない。
ここはボクよりも、ヤンキー赤ずきんさんが行った方がいいはずだ。
そーっと申し訳ないという気持ちいっぱいになりながらも、ヤンキー赤ずきんさんへ目配せする。
「……嫌だからな」
「お願い。これ以上壊すと、時間が倍以上かかるから!通れるうちに通っておきたいんだよ」
「だったらおまえが通りゃいいじゃねぇか」
「ボクよりもヤンキー赤ずきんさんの方が、スムーズに通れるに決まってんじゃん」
ほら、行った行った!とボクはヤンキー赤ずきんさんの背中を押した。たどたどしく足を運ぶと、ヤンキー赤ずきんさんは、穴の前で少し躊躇う。
それから意を決して、穴へと体を滑り込ませた。
「…っと、うわっ!」
壁の向こうから声が聞こえる。ひとまずは無事なようで安心した。
「大丈夫?」
「まあな。ただ、普通の部屋っつうか、廊下が繋がってるだけだ。グレーテル達が何処にいるかなんてわかったもんじゃねぇぞ?」
てっきり、森とか普通では考えられないような光景が広がっていると思っていたので、少し拍子抜けだ。
「にしても、マジで何にもね……あ?」
「どうしたの?」
「いや、なんか目の前にキラキラしたのがあって…。なんつうか、星?みたいな。色は黒っぽいんだけど」
“星”という言葉に、ボクは馴染みがあった。魔女さんの魔法、お菓子の家で見せてくれたあの魔法だ。
でも、魔女さんのは黒じゃなく、黄色に輝いていたはず。
違う人の魔法?だとしたら、候補は一人しかいない。ロンだ。
ならばきっと、そのキラキラを手がかりにすれば、ロンのいるところにたどり着く。そこには、ヘンゼルとグレーテルもいるはずだ。
「ヤンキー赤ずきんさん!このキラキラ追いかけて!ボクは後から行くから」
「はっ!?いや、追いかけるっつったって……」
「それがグレーテル達への最大の手がかりなんだよ!」
そう言うと、もう何を言っても聞かないと思ったのか、ヤンキー赤ずきんさんは“わぁったよ!”とぶっきらぼうに言って、走っていった。
そんな、遠くなっていく足音を聞きながら、ボクはまず穴から出よう。と決心したのであった。




