#49 go to help
「手伝うって何をだよ」
「ここの壁を“破壊”すんの」
ボクの一言に、ヤンキー赤ずきんさんは、いつものしかめっ面でオウム返しをしてきた。頭にはてなを浮かべる様子を見るに、理解が出来ていないようだ。
ボクは破壊する予定の壁に足を向け、勢いよく蹴る。ガッと鈍い音が窓も何もない部屋に響き、消えていく。
けれど、大袈裟なのは音だけだったようで、壁には傷一つ付いていなかった。流石にこんな蹴りひとつで壊れてくれるとは思っていなかったが、ヤンキー赤ずきんさんと拘束されている状況じゃ、力も上手く込められない。
これは困ったぞ……。
「壁を本気で壊せると思ってんのか?お前。コンクリートだぞ?それを生身の人間が……」
「生身の人間だけで壊すわけないじゃん。ここにある全部を使って、この壁を壊すの。ヘンゼルとグレーテルを殺人鬼には出来ないからね。早くここから出なくちゃ」
椅子を引きずり、次のアタックに備えているボクを見て、ヤンキー赤ずきんさんは一つ溜息をつき、椅子を右手で持った。破壊に協力する気にはなってくれたみたいだ。
にしても、本当に急がないと童話の「ヘンゼルとグレーテル」と同じ結末になってしまう。ボクが絵本で読んだ時はいい風に終わっていたが、冷静に大人の思考で考えてみろ。
小さな子供たちが、大人を焼き殺しているんだ。ニュースになるくらいの殺人事件だ。
「オラッ!」
ガンッと壁に椅子を打ち付ける。壁を確認すると、一番強く当たったであろうところだけ凹んでいた。椅子でこのくらい。なら、机だったら?クローゼットは?最終的にはベッドだって。やれるものは全部やる。
なんだか、魔女の手のひらの上で転がされているような気持ちにもなってきたが、ここまできたら喜んで手のひらの上に乗ってやろう。だって、ボクは魔女なんかよりもこの世界の全てを知っているんだから。
結末を知っているからこそ、変えられる。ヘンゼルとグレーテルにとって、一番幸せな結末を探し回ってやる。
「ヤンキー赤ずきんさん、次は机でやろう」
「その前にこの紐どうにかなんねぇのか?邪魔で邪魔で仕方がない…」
「んー、解けるかやってみる?」
「そうしようぜ」
ボクらに残された時間は、後どれくらいあるのか。今のところ、壁に着いた傷は一つだけ。壁が壊れるか、破壊する家具たちが壊れるか。正直、どちらが先かは分からない。どっちも有り得ると思うし、最悪家具が壊れても、その壊れた破片たちで壁を殴るから大丈夫だ。
ヘンゼル、グレーテル、絶対助けに行くからね。




