#47 少女の決意
グレーテルside
「にしても、あなた達ガリガリで食べてもすぐ無くなっちゃいそうですねー」
どうしようかな〜。なんて呑気に考えている女の人の後ろで、私はどうにか逃げ出せないか周りを見る。
偶然なのか分からないが、部屋は魔女さんのお菓子の家の内装とそっくりだった。違うところといえば、部屋の広さと家具の変化だけ。
机に椅子、キッチンなどは同じだが、可愛い雰囲気には似合わない、かまどがあった。使い古されているのか、近くで見ると擦り傷や使用の後が見られた。
普通ならパンとかを焼くために使うんだろうけど、この女の人なら人を焼いたりしているのかも……。それで、こんがり焼けた人間を丸呑みに──
「グレーテルちゃん?」
「うわあっ!?」
「びっくりしすぎですよ〜。安心してください。まずはお兄さんの方から食べるので、あなたはまだですよ」
後ろから急に声をかけられ、過去最大の悲鳴を出してしまった。そんな私の反応が面白かったのか、女の人はケラケラと笑い、また私たちを食べる話をする。
ヘンゼルがいつ食べられるのか、まだ分からないけど、早くここから逃げるに越したことはないはず。
一緒に落ちたはずのはじめ達も無事なのか心配だし、魔女さん達も怪我してないか心配。だけど、今は自分達の事を一番に考えなきゃ。
そう、前向きに考えようとしていた私を絶望に突き落としたのは、紛れもない。この女の人だった。
「食料が沢山ある訳でもないですし、このお菓子の家も食べれる訳じゃない。しょうがない、一人目はもう食べちゃいますか」
「え…」
「大丈夫、最後のお別れくらいはさせてあげます。必要なら、少しだけお肉も分けてあげますよ〜」
「い……いらないッ!」
どうしよう、どうしよう、どうしよう。目の前がぐにゃぐにゃと歪む。ヘンゼルが食べられる?食べられるってことは、死んじゃうってこと?お父さんにも会えない…?
不安と恐怖で、知らない間に唇を噛んでいたようだ。口の中に血の味が広がっていく。
「血…こんなふうに……ヘンゼルも…」
全てを悪い方向に考えてしまう。でも、怖くてどうしようもない。涙が目に浮かぶ。
「とりあえず、ご飯の準備をするとなると、ざっと見込んで一時間くらいで食べれそうですね。パンも食べたいから、かまどで焼くとして…。
グレーテルちゃん、お兄さんを美味しく食べるためのお手伝い、よろしくお願いしますね」
そう言った女の人の言葉に、私は返事をしなかった。ただ、その代わりに、顔を上げて女の人を睨んだ。
下を向いている場合じゃない。猶予は一時間。その間にどうにかしてここから逃げる。あいにく、ヘンゼルと違って、私は鎖に繋がれていないんだ。
この一時間、クヨクヨしたまま無駄になんて出来ない。絶対に。




