#44 別人
魔女さんside
「……あの子、私の妹じゃないのかも」
「は!?急に何言ってんですか!長年会ってないせいで、妹さんの顔を忘れちゃいました?」
ロンに連れていかれたヘンゼルを探して、屋敷の中を走り回っていた時。私はふと、呟いた。クラージュ君は、信じられないという顔で私を見てきたが、忘れたとかそういう次元ではないのだ。
根本から違う。そう感じた。妹と話さず、仲が良くなかった私が言えたことでは無いのかもしれない。でも、あれはロンじゃない。そう断言できる。
「昔のあの子なら、きっと私に笑いかけるなんてことしない。自慢じゃないけど、本当に仲は良くなかったの。あの子の影響で魔法が使えるようになった、とかは記憶に残っているけど、それ以外はお互い干渉することも無かったから」
「魔女さんの事だから、いいお姉さんなんだろうと思っていたので、正直びっくりです。うちの兄弟は仲が良かったので、そんな兄弟を見るのも新鮮ですし。けど、それだけで本人じゃないなんて断言できます?ホームシックとか言うじゃないですか。唯一の家族である魔女さんを無意識のうちに求めていたって、何ら可笑しいことではないですよ」
「ホームシック……確かに、私は多少あったけど、ロンもそうだったのかな。一人自立している部分はあったけど、私の作ったお菓子は食べていたし、小さい頃は、きっと一緒に遊んでいた……はず。
まあ、だからかな。さっきあったロンは、なんて言うか、“幼児退行”している感じがあって。敬語なんて全く使わなかったのに、幼い自分を悟られないようになのか、慣れない敬語を使って…。
これまでの記憶や蓄積されてきた性格は模倣していても、一応長年いた私から言わせてもらうと、解像度が低かったかな。ロンはあんなに無邪気じゃなくて、もっとずる賢い。ほんと、根っからの“魔女”だったよ」
私の記憶を探っても、もう無邪気に笑うあの子を思い出すことはできない。思い出せるのは、家を出ていった時の背中や、毎日ご飯を一緒に食べていた時の何とも言えない空気、私の作ったクッキーを頬張る姿。
大人としては嫌いだったけど、姉としては嫌うことはできなかった。その証拠に、ことある事にお菓子を作って差し出していたし、私が住んでいるのだって“お菓子の家”だ。
ロンを忘れたと思っていたけど、忘れていなかったんだな、と今更気づく。遅いけど、この件が無事終わったら、家に招待してみてもいいかもしれない。来てくれない気もするが、久しぶりに私のお菓子を食べて欲しい。きっと、仏頂面でお菓子を頬張ると思うから。




