#43 屋敷の中へ
「ぐふッ……」
「よっしゃ!畳み掛けるぞ!」
「ボクを殴った罰だ……って、や、ヤンキー赤ずきんさん?やりすぎじゃ…」
ドンピシャでボクの腕が鼻の辺りに当たり、鼻血を出して狼男が倒れる。
そこを狙ってヤンキー赤ずきんさんが狼男の腹を殴る。殴って、殴っ……やりすぎじゃね?
ということで、ボクが慌てて止めたが、その時にはもう狼男は気絶していた。なんか、さすがに可哀想だな。
「さて、静かになったし、さっさと屋敷の中に入ろうぜ」
先程の乱闘を終え、大人モードに入ったヤンキー赤ずきんさんに着いていきながら、門をくぐる。
くぐった先には庭園があり、きれいな花が栽培されている。
あれは……百合だろうか?でも、色が黄色だ。
ボクは花に詳しくないので分からないが、黄色い百合も栽培できるんだ、と少しびっくりしている。
「おかしいよな」
「へ?何が…?」
「気づかないのか?あの門をくぐってから、虫の1匹さえ見てない。さっきまでは鳥だって鳴いてた。庭園があるのに、そこに虫1匹湧かないってのも変な話だろ?」
言われてみればそうだ。こんなに沢山の花が咲いているのに、蝶々や蟻もいない。他の生き物たちもみんな、ここだけを避けているみたいにいなかった。
「開けるぞ」
ギィィ……と音を立てながら、屋敷のドアを開いていく。ノックも無しに良かったのか?と思ったが、仲間をこんなふうに(気絶させたのは赤ずきんさん)されているのだ。礼儀や遠慮はいらないだろう。
もしかして、ドアを開いてすぐに罠が…?そう思っていたが、現実は斜め上の回答をしてきた。
ガバッと勢いよく抱きついて来た少女、グレーテル。狼男を床に置き、グレーテルと目線を合わせる。
「ひむろ!ヘンゼルが、こわい魔女さんに捕まっちゃった…」
ポロポロと大粒の涙を零しながら、グレーテルは嗚咽混じりの声で話してくれた。
ボクらと同じくドアを開いた所までは良かったそうだ。少し雑談をしながら、歩いてドアの前まで来た。そして、ドアを開くと待ち構えていた魔女さんの妹。魔女さんたちは動くことすら出来なくて、何故かヘンゼルだけを連れて消えてしまったのだと。
「じゃあなんで、クラージュと魔女がいないんだよ。捕まってないんだろ?」
「探しに行ったの、ヘンゼルを。でも、全然帰ってこなくて……。でも、ここで2人を待っててって言われたから動くに動けなくて…」
グレーテルも一人で不安だっただろうに、よく待ってくれていた。普通なら逃げ出してもおかしくない状況なのに……。本当にしっかりした兄弟だ。
「んじゃ、ボクらもヘンゼルを探しに行こう?きっと、グレーテルの助けを待ってるよ」




