#17 終わり、そして始まり
「こんな風にわかんねぇ事を考えてても仕方ねぇよ。とりあえず、ばあちゃん待たせてるし、行こうぜ」
ヤンキー赤ずきんさんが言っている正論に従い、僕らは気を取り直して玄関に向かった。
「どこに行くんですか?」
一人状況の掴めていない子ヤギ君は、頭にハテナを浮かべて、不思議そうな顔をしている。
ヤンキー赤ずきんさんはお母さんと旅前最後の会話をしていて、狼男は荷物を詰めているため、説明できる奴は僕一人。
不安そうな表情の子ヤギ君と目線を合わせて、僕はまた長くなりそうな説明を始めた。
───けど、やっぱり初めは自己紹介だろうか。
「えっと、僕は氷室はじめ。君は?」
「ボクはクラージュ・スケアードです!はじめって名前、不思議な響ですね!」
そっか、童話の世界ってやっぱり街並みもそうだけど日本じゃないんだよね。
だから、名前もここの人にとっては聞き馴染みのないものなのか。
とりあえず、僕が何をしようとしているのかと、この世界が童話のことを……いや、童話の事は言わなくていいか。
まだ小さいのに、自分の世界が誰かに作られたもので、自分の運命とか、そんな難しいことこの子はまだ知らなくていいか。
「あー…っと僕らは3人で旅をしよう!ってなってて、その目的が欠片を探すことなんだ。なんで欠片を探すのかとか、なんで旅をするのかとか、僕も詳細は知らなくてなんとも言えないんだけど…。君も着いてくる?結局はクラージュ君の世界の欠片も探さなきゃみたいだし、それまでの暇つぶし……見たい感じかな」
そう言うと、数秒固まって考え込んでいるようだ。んんー…と唸ってチラッとこっちを見たと思ったら、次はヤンキー赤ずきんさんに目線を移し、最後は狼男をひと睨みして、僕に視線をもどした。
「分かりました。あの狼男は気に食わないですし、赤ずきんは目付きが悪いですけど、貴方は一応まともそうなので…着いていきます」
言葉の節々に棘を感じる言い方に、見た目に反して結構毒舌なんだな、と思った。
まあでも、ヤンキー赤ずきんさんも嫌とは言わないだろうし、狼男に関しては、連れて行きたそうだったし、文句ないだろう。
「じゃあ、改めてよろしく。早速だけど行こう……」
「遅せぇ…置いてくぞ!はじめ!」
「え、さっきまで2人とも準備してたよね?いつの間に……」
そんな事を考えている間にも、ヤンキー赤ずきんさん達は待っているわけで……。
とりあえず、2人ともうるさいしさっさと行こ、とクラージュ君の手を引いて、玄関のドアを開けた。
「ちょ、ちょっと!」
きっと、これが漫画や小説ならば、この後はきっとこの一文が入るだろう。
序章、赤ずきん終了…と。




