#11 友達
「オレ……の」
数十秒たった今でも口をムニムニと動かして、言葉を濁している。そんなヤンキー赤ずきんさんに飽きてきたのか自分の耳をいじっている。
僕?僕は気まずい空気の中、下を向いて頑張っている。さっさと話を続けてくれ……!ヤンキー赤ずきんさん。
「あ!アレだ、あの……友達?」
おずおずと言った様子で"友達"というワードを言った。頬を掻きながらヤンキー赤ずきんさんは少し恥ずかしそうにしていて、言い慣れていないのかと思った。
僕と狼男は友達と言われるなんて思ってなくて、目をパチパチと何度も瞬きを繰り返してしまった。
「そ、そうだ!そうなんだよ、オレら親友ってやつ?」
「そこまでは言ってないと思うけど。まあ、友達です」
狼男に便乗して自分も友達だとヤンキー赤ずきんさんのお母さんに伝える。
これで少しの警戒は解けたらいいが…。
「へえ!ケイトに"友達"ねぇ……。なんか、嬉しいわ。私。
ほら、ご飯作っていたところだから入りなさい」
太陽のように暖かな笑顔を浮かべ、お母さんは家の中へと通してくれた。その笑顔は勿論引きつっている作り笑顔なんかではなくて、我が子に初めて友達が出来たとはしゃぐ親に見えた。
ヤンキー赤ずきんさんのお母さんがキッチンで料理を作っている中、ボクらはどうやって旅の話をするか話し合いの真っ最中だった。
「やっぱ、包み隠さず言うのが手っ取り早いだろ」
「そりゃそうなんだが……」
「言う勇気が出ないと」
ヤンキー赤ずきんさんは多分だが、否定される事も怖いんだろうし、それでお母さんと疎遠になるなんてことがあれば……、とか色々考えて言えないんだと思う。でも、それで普通だと思う。まだ11歳だって言ってたし、家族と過ごすのが大切な時期だ。
年上として何か言葉をかけてあげられればいいんだけど……。
「なんて言えば…」
「ヤンキー赤ずきんさん。悩むなとも言えないけど、ヤンキー赤ずきんさんのお母さんならちゃんと話を聞いてくれるんじゃない?少なくとも、僕はそう思った」
シンプルで当たり障りの無い事を言ったつもりだ。変に大丈夫と言うよりも、お母さんの事を信じて、って言った方がきっと安心出来る。
だってそれは、確信を持てないものじゃくて、嘘偽りない、ヤンキー赤ずきんさんが知ってる事実なんだから。
初めはきっと反対されるだろう。子供が心配じゃない親なんて居ない。おばあさんだって、僕というイレギュラーの存在をどうしようと悩んだはずだ。
悩んだ結果、この提案をした。それはすごく責任を感じる事だけど、時にはそういうぶっ飛んだ提案も大切だと思う。
「……分かった。言ってみるよ、どうなるかわかんねぇけど」




