#10 絶望の表情
「何も言わずに旅に出たって母さんが聞いたら、オレ……殺されるぞ?」
なんてヤンキー赤ずきんさんがいつにも増してビクビクしているので、僕らは旅に出るのを明日に変更し、今日はヤンキー赤ずきんさんの家に泊まることになった。
そして、先程よりも暗くなった空を眺めながら、僕らは足を進める。
「な、なんて説明すればいいんだよ…。急に旅に出るとか言ったら、なんて言われるか…」
「さっきまでの生き生きしてたヤンキー赤ずきんさんはどこへ…」
歩いている途中で、呪文のようにどうしよう、どうしよう…と言っているヤンキー赤ずきんさんを見ると、流石に心配してしまう。
というか、そんな怖いお母さんの元に、お荷物2人引き連れて帰っているが、そこの心配はないのだろうか?
それこそ、追い出されそうだ。
「あ。あそこじゃね?」
あれからもう少し歩いて行くと、狼男が疑問の声を零す。狼男が指した先にはいかにも童話に出てきそうな家が立っていた。
「合ってる?ヤンキー赤ずきんさん」
「あ?あ、あぁ……」
気が動転しているようで、凄い形相で睨んできたかと思えば、気が抜けたような顔をして返事をする。
そんなに不安なら旅しようなんて言い出さなきゃ良かったのに…。なんて言うとヤンキー赤ずきんさんに怒られそうだから辞めておいた。
「よ、よし。い、行くぞ……」
絶望しかけているヤンキー赤ずきんさんとは裏腹に、僕らはそこまで気にしていなかった。
きっと何とかなるだろう!というポジティブ精神でいるからな。
「ケイト、あんたねぇ。そのままばあちゃん家に泊まってくれば良かったの…に」
出てきたのはヤンキー赤ずきんさんと同じ茶髪で、くせっ毛の女の人だった。
大きな目に小さい鼻、これが俗に言う美人なのだろう。さすがは童話の世界、現実よりも顔面偏差値が高い。
まあ、そんなことは置いておいて、ヤンキー赤ずきんさんのお母さんは、目を丸くしてボクらを見ている。
そりゃそうだ。自分の子供が帰ってきたかと思ったら、知らない2人組を連れているんだから……。
「あんた、おばあちゃん家に行っただけなのよね…?」
「勿論」
「……じゃあ、この子達何?」
怪訝な目で見てくるお母さんと、冷や汗ダラダラのヤンキー赤ずきんさん。どうにか頭を動かして返答を考えているようだ。この場での正しい返答を。
「お、オレの…おれ…の」
すごい顔をして言葉を繋げようとしている。旅する仲間なんて、言いにくいのだろう。それに、出会ってまだ数時間の関係だ。
なんと表せば良いものか…。僕にもさっぱり分からない。




