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「司?」
とりあえず体を起こす。
「無理しない方が」
心配するふたりの声をふり切って印籠から丸薬を出し飲みこんだ。
強烈な匂いに柔な思考が横殴りされる。
「だいじょうぶ。ぬらりひょんが出てったから妖気減ったし」
まだ頭はくらくらするけど、とにかく何かしないと。
「お歯黒べったりのところに行こう。なんの方法も考えつかないけど、ぬらりひょんの身請けをぎりぎりまで伸ばさせる交渉でもなんでも」
「だな!」
「まず行動だね」
三人で一階に向かおうとした時、ふたたび障子か開いた。
今度牛太郎と呼ばれている鬼たちが押しこんできた。
* * *
『おまえらは今から下働きな!』
牛太郎たちに荷物担ぎで運ばれ放りこまれたのは物置だった。
『金子分は働けよ。まずは利子を返すところからな』
歩くたびにぎしぎし言う床は真っ黒でとかげやゴキブリ、ねずみまで徘徊している。
天井は蜘蛛の巣だらけで……。あのぶら下がってるの骸骨か?
糸でぐるぐる巻きにされてるけど、骸骨だ。
「オレたちは金借りてなんかっ」
『昨日楼主からもらったろ』
反論すれば耳を疑う返事が投げられた。
あのばばあ。
最初からこうするつもりだったのか。
『手抜くんじゃねえぞ。ちょっとでも変な動きしたら鯉の餌になるからな』
鯉って、あの?
オレたちの脳内に鯉とは名ばかりの物の怪がイルカジャンプを決めていた。
『分かったら、そこの掃除道具持って行け』
牛太郎の一匹が顎でしゃくったところにはぼろぼろの竹箒、雑巾があった。
唖然としていればもう一匹が適当に道具をオレたちに押しつけ、それぞれ持ち場に連行された。




