16
「うおおおぅ」
着火した花火をふり回すサクの周りで、ヤシチたちがネズミ花火を刃先でくるくる回している。
『ねーえ。そんなただの火よりアタシの方が魅力的でしょ?』
「炎子さんの火が一番素敵ですよ」
マサノリの言葉に鬼火は、ぼふっと火柱をあげる。
「みんな楽しそうでありんすなぁ」
「ナヲさんはどうですか?」
「楽しいでありんすよ」
サクとマサノリにくらべて少し静かじゃないか?
火は炎子につけてもらった、ただのろうそくで桶も物の怪じゃないせいもあるだろうけど。
花火片手に、かまいたちと砂浜を走りまくる友人と動きは少なくてもやたらと熱量が激しい友人。
らしいと言えばらしい。
「なんか和むでありんすね」
シューと音を立てる花火にチカが微笑む。
露店巡りも楽しかったけど結構せわしなかったし、やっとゆっくりできた感じだ。
さっきは、夏祭りを体験させるのに必死で思いつかなかった、昔の話題をふってみることにした。
チカに、まつわるできごとを色々話してみるが、彼女はきょとんとするばかりで「そんなけったいなもんがありんすなぁ」と無関心だ。
(だったら、これはどうだろうか?)
「ナヲさん。タマって名前に聞き覚えありませんか?」
タマとは小学生の頃チカが飼っていた半分野良の猫だ。
近所の道路で事故に遭い死んでしまった。
一週間チカは泣いたままで魂になったタマが心配そうにくっついていた。
オレはタマが今でもチカのそばにいることを教えた。
視えることを隠しはじめていた頃だったから、家族以外には初めてのカミングアウトだった。
なんの前置きもなくただ言っただけだったから、チカは覚えていないだろうけど。
目の前のチカは、ただ黙ったままだ。
(って、元々覚えてない話をしたって意味ないだろ)
他に何かあったか、とオレは火花のシャワーを見つめた。
「あれ、うれしかったんだよね。タマがそばにいてくれるってわかったから」
何度目かの一瞬の幻聴に、ぱっと顔をあげる。
「チカ?」
「あちきはナヲでありんすよ?」
困ったように首を傾げる彼女は大人びている。
(だめか……)
期待が例外なく裏切られて、口の中に苦みがじわりと広がった。




