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「これ、雪女の吹雪に何をかけてるでありんす? 真っ赤なのは血でも混ぜてるんでありんすか?」
「これは、かき氷ってやつで氷を削って色つきの甘い蜜をかけてあるんです」
チカが毎年食べている露店メニューをひとつずつ試すことにしたオレは、次に、いちご味のかき氷を選んだ。
記憶がないにしても見た目に対する感想が怖すぎる。
まだ、こっちの世界の住人になりきってはいないのに、人間味が薄れている気がした。
「甘―い! 冷たくてしゃりしゃりしてて美味しいでありんす」
実食後の感想は普通で安心する。
「蜜だけ吸うと甘くないとこが残りますよ」
ストローでシロップを飲むチカに、かき氷あるあるを注意した。
ガキの頃オレがよく言われてたんだけども。
「じゃあ残った甘くないところは司ちゃんが食べるでありんす」
「エ?」
とかなんとか言ってる間に氷の色がピンクになって、とうとう色が抜けおちてしまった。
押しつけられたかき氷は、すっかすかの水分が飛んだ日陰の積もった雪状態になっている。
……関節キス・リターン?
チョコバナナと違って細かい粒の集合体だから、ストロー以外は、そこまでじゃない。
いや、ストローで飲んでるってことは唾液とか入ってるし、だからもっと深い(?)んじゃ?
煩悩で、もんもんとしつつ、オレは、ほぼ無味になってる氷粒の集合体をぐるぐるかき混ぜていた。
「わ。舌が真っ赤になってるでありんす」
懐から手鏡を出したチカが、いちごシロップに染まった舌に目を見開いている。
高飛車なくせに、こういうドジっぽいところが可愛いって思ってしまう。
「時間が経てば元に戻りますって」
「だったら次に行くでありんす」
元に戻ると聞いて安心したのか、チカはオレの腕を引っ張った。




