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 チカは鳥居の真下にすら入っていない。


 あと数ミリ動けば左右の柱に差しかかる位置なのに。


「シロガネさんは人間の世界の者なら鳥居を見つけられるって言ってたよね」


 マサノリの問いかけにオレとサクは、うなづいた。


「ああ」


「あのじじい、嘘ついてなかったんだな」


「チカ先輩は、どっちつかずの状態だからくぐれないのはいいとして。ボクたち単独でもくぐれないってことは」


「オレたちも、こっちの住人になりかけてるってこと、か」


 自分で言っておきながら重苦しい現実がずっしり心と体にのしかかる。


「ひだひっ」


 急に両方頬を引っぱられた。


「難しい顔して可愛いおカオが台無しでありんす。せっかくの若いおにいさん三人連れ。もっと楽しいことするでありんす」


 至近距離に口を尖らせたチカの顔があった。


 若いって一学年しか違わないし。


「露店に用事があるって言ってたでありんすな。早く行くでありんす」


 ヤシチたちの風に乗り、さっさと行ってしまう。


(ほんと強引だよな)


 記憶はなくても、ところどころ以前と重なる部分があってややこしくなる。


「当初の目的はクリアできたことだし。次に行こう」


「だな!」


 出口に背を向けオレたちもチカの後についていく。


 鳥居をくぐれないと判明した以上、元の世界に帰るには、彼女の記憶を取り戻させるしかない。

 



              * * *




「なあ。ここってイッテンシカイだよな」


 サクが、改めて今いる世界の名前を確認してきた。


「イッテンシカイ以外、どこだと言うんでありんすか?」


 愚問とばかりにチカが鼻で笑う。


 間違いなくオレたちがいるのは、普段の中途半端な田舎町ではなく、物の怪の棲む世界である。


 しかしサクの疑問も当然だ。


 鳥居から露店出店場所に移動してきたけれど、予想とは異なる光景が広がっていた。


「だってチョコバナナにたこ焼き。わたあめに焼きそばって時代劇がっつりな世界観ぶち壊してねえ?」


 廓が健在、通貨単位といい、江戸時代をパクってる感満載(実物を知らないから想像だけど)。


 露店も巻き藁に風車が刺さってたり、並ぶお面はひょっとこにおかめ。


 食べ物は団子、甘酒、飴があるくらいが相場だと思ってた。


 オレたちのいる道の両側には、現代の祭りでお馴染みのものばかりだ。


 露店に立つ者や提燈、道行く客が物の怪であること以外は。


 正直、町内の祭りにいるのではないかと錯覚していまいそうだった。


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