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「明るいけど真っ暗だよな。空とか。夜なんだから当たり前か」


 空を仰ぐサクがつぶやく。


「夜明けまで何時間かも分からないしね」


 マサノリもスマホを見るが、時計は止まったままだ。


 オフラインのカメラアプリやメモ帳は使えるのに、外界と繋がる機能が使えない。


「何を言ってるでありんすか。ここは常夜。ずっと夜でありんす」


「ずっと夜⁉」


 思わずふたりと叫びがハモった。


 チカからの衝撃発言に唖然とするしかない。


 時間が不明などころか朝も来ないんじゃ曜日感覚だって狂う。


「ナヲさんっ! 時間の速さもここって人間世界とは違うんですか?」


 もし時間間隔が違えば下手したら浦島太郎状態だ。


 思わずチカの両肩を掴んだオレをサクとマサノリが押さえようとする。


「痛いでありんすっ! 時間は人間の世界とおんなじでありんすっもう!」


 オレの手をどけようと暴れたチカがバランスを崩す。


「チカっ!」


 手を伸ばしたけど彼女の手があと一歩のところですり抜けた。


 ひゅうううっ!


 つむじ風が吹く。


 倒れかけたチカをヤシチたちが包んでいた。


「いい子な、かまいたちでありんすねぇ」


 頬ずりしてくるヤシチをチカは嬉しそうに撫でている。


 三匹のフォローでふわりと着地した。


(よかった……)


 一瞬血の気が引いた。


「落ちついて司。とにかく今は鳥居の場所を確認しよう」


「時計がないのはダンジョンあるあるだって」


「ああ、そうだよな」


 何やってんだよ。


 焦ったってどうしようもないだろ。


 チカに怪我させるところだったし。


 自分の衝動的な行動が情けない。


「司ちゃん、て言うんでありんす?」


 ひとりで肩を落としているとチカが棘のある声で話しかけきた。


「そうですが……。すみませんナヲさん」


「まったく会うなりあちきを睨みつけるわ乱暴してくるわ。そんなんじゃ女の子から嫌われるでありんす」


 ふんっと首を横にふる。


 せっかくスマホで近づいていた距離が一気に遠のいた。




             **  *




「楽ちんでありんす~」


 ヤシチたちのつむじ風に乗るチカが満面の笑みを浮かべる。


 あの超厚底下駄では時間ロスがエグいため『チカ先輩歩くの大変だからヤシチとサカキとゲンロクで運んであげてもらえるかな? ここから出られたらチカ先輩がたくさん駄菓子をご褒美にくれるよ』マサノリの提案(口車とも言える)に三匹はあっさり快諾した。


「マサノリ。そんな約束していいのかよ」


 サクがこそっと耳打ちする。


「物の怪との契約は破れないものだけど、“ここから出られたら”って制限もつけたし。事情を話せばチカ先輩なら必ず駄菓子を用意してくれるでしょ」


「それはオレが保障する」


 あれだけ、べったりだったのだ。


 自分を助けるのにヤシチたちが一役買ったと言えば、鶴亀堂の在庫を全部与えそうである。


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