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『わっ! なんだよこのかまいたち!』
聞き覚えのある悲鳴がして足元に目をやると、ゲンロクが唐傘おばけたちを包囲するように飛んでいた。
「よーし、いいぞゲンロク。そのまま逃がさないでね」
その手前では、スマホのシャッターを切りまくっているマサノリがしゃがんでいる。
『うわ、なんだこの変なやつ!』
『逃げろ逃げろ魂抜かれるぞ』
彼の熱狂に恐怖した物の怪たちは猛ダッシュで逃げていった。
「あっ。物の怪なんだから電子機器とは相性いいはずなのになぁ。ゲンロク、次あそこの角にいる女性ふたりね」
モデルをスカウトするカメラマンのごとくマサノリが指示を出す。
ターゲットにされた骸骨(女性だったのか)と雪女があたふたしている内に、ゲンロクは風を巻きおこした。
『げほげほっ。かまいたちが何するんだい!』
骸骨女が咳き込み、雪女は手から氷の粒を出した。
『氷漬けにしてや』
「すみません。ちょっとお時間よろしいですか? これ一発で絵になる道具なんですよ」
物の怪女子ふたりの事情などおかまいなしにマサノリが押しの強さで迫っていた。
「もっと紅を足して」
「わたしはこのきらきらしたのを増やして」
数分後――。
写真加工アプリにハマる物の怪女子が二名できあがっていた。
「あれっていいのか? なんか合コンみたい」
「いいんじゃない? 楽しそうで」
非現実的光景と現実的光景の完全一致具合にオレとサクは笑うしかない。
「これ、あのおにいさんの持ってるやつと同じでありんすか?」
背後からのチカの声にふり向くと、ポケットからオレのスマホを勝手に抜きとっていた。
「勝手に人のスマホ取るなよっ」
「こんなんで絵が描けるんでありんすか?」
首を傾げ疑いの眼差しを向けてくる。
「描けるっていうか、生き写しできますよ」
人間としての記憶がないのだから当然だけど、今のチカの態度に少しイラ立ってたオレはちょっと優越感にひたった。
「だったら、あちきに見せておくんなまし」
チカが挑発的な上目づかいでオレを見る。
(要は写メを撮りたいんだな)
「分かりました。見せますから」
オレは彼女の隣りに立った。
アイコンからカメラアプリを選び起動する。
これも強引に入れさせられたやつだけど。




