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「あちきは廓の花魁でありんす。気安く触らないでくんなまし」
手を差しだすも、ぱしんと叩かれた。
チカは、つんとそっぽを向いてしまう。
睨んでると誤解されたままらしく印象は最悪のようだ。
『ぴい』
ヤシチが心配そうに彼女の周りを飛ぶ。
「かまいたちでありんすか。あんまり近寄らないでくんなまし。そのカマで肌に傷がついたら困るでありんす」
しょぼん、としたヤシチはよろよろとオレの頭に乗っかった。
「だいじょうぶだって。おまえらのことも思いだすから」
さすがに、かわいそうになってヤシチを撫でてやった。
「そのかまいたち。おにいさんの持ち物でありんすか?」
「どちらかと言えばナヲさんが可愛がってたんですよ」
なぜだか今のチカには敬語になってしまう。
「寝言は寝てから言うでありんす。こんなものをあちきが飼うわけないでありんす」と彼女はますます機嫌を損ねた。
あんなに、もふりまくってたのに落差が凄まじい。
元々強引だったけど、この気位の高さにはうんざりしてくる。
(にしても、ここにいたら体がもたないってなんだよ)
実際に身に染みているけれど、改めて認識することで余計に気が重くなった。
『おやおや御新造さんだよ』
『若い人間までいる』
『花魁を連れているなんて人間は羽振りがいいんだね』
ほぼ骨だけのぼろぼろな唐傘、弦が切れまくってトウモロコシの髭状態の琴、穴が開いてたりヒビが入ってる茶釜を着た狸が跳ねながら通り過ぎていく。
物の怪の世界に来てまで珍獣扱いかよ。
既視感が半端ない。
『見てごらんよ。あの花魁まだ人間だよ』
『でも、そのうちコッチに来ちまうよ。人間は欲の塊だからね』
くすくすと笑い声が聞こえた。
少し離れた建物の角から着物姿の骸骨と見るからに雪女な物の怪が覗いている。
口さがないのは物の怪もいっしょか。




