お祭りデート
「何を睨んでるんでありんす?」
チカのいる座敷に戻れば、さっきと同じ台詞が向けられた。
睨んでるつもりは一切ない。
「すみません」と返せばチカは、あくびをしている。
なんでこんなことになっているんだろうと無意味な問いが巡っていた。
今日だって昨日と同じことをくり返していたはずだった。
補習の後みんなで鶴亀堂に集まって駄菓子食べてラムネを飲んで、夕方から物の怪を捕獲に向かって。
去年と同じで十六日に物の怪を還したら、毎年恒例の夏祭りに行っていたはずなのに。
「今年も夏祭りに行くって言ってただろ」
無意識につぶやいていた。
「司。夏祭りを疑似体験したらいいかも」
「え?」
マサノリが、はっとしたように声をかけてきた。
「あっ! 追体験ってヤツ? なんか古の記憶を辿ってみたいな!」
サクも前のめりに口を挟んだ。
「ガキの頃からチカ先輩と夏祭りに行ってたもんな」
「ボクたちの中でチカ先輩と一番近いのは幼なじみの司だしさ」
ふたりの言葉の一言一句が浸透していく。
チカとの思い出なら腐るほどある。
暗闇に光が差したって感覚を初めて味わった。
「幸いこの世界でボクたちは貴重品。きっと無知なお飾り王子三人って位置づけみたいだから色々融通利くと思う」
お歯黒べったりの態度からして、オレたちじゃ何もできないと高を括っている。
それを利用しない手はない。
もう一度階下に向かおうと立ちあがった。




