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「初体験を済ませたら即終了ってことですよね」
マサノリがズバッと核心を突く。
「はあっ⁉」
サクも飛び起きた。
「だからチンタラしてねえで“ナヲ”に人間の記憶を戻させんだよ」
すでに源氏名までついているらしい。
「器量よしだかんな。もう指名が入ってたりしてよ」
(このクソジジイは)
煙管を吹かしてニヤつく顔に怒りしか湧いてこない。
くゆる紫煙のようにつかみどころがない。
シロガネは踵を返し座敷から出ていった。
広々とした座敷内に花火と祭囃子の音が反響する。
「どうすんだよ。おれら、このまま出られないってことかよ?」
沈黙を破ったのはサクだった。
混乱と焦りで語気が強まっている。
「まずは落ちつこう。パニくったら逆に時間のロスになる」
「落ちつけるかよ~」
「サク。こういう緊急事態の時こそ光の申し子・ウィリディス・フルフィウスの出番だろ」
「いや、どっちかっていうとRPG系だし、ここ時代劇の世界じゃん」
「和製厨二病も患えって」
「ふっ」
サクとマサノリが同時にこちらを見る。
オレはちいさく吹きだしていた。
ほとんど普段のやりとりが目の前でくり広げられていて少し緊張が解ける。
「ありがとう。ふたりとも」
オレの言葉に、ふたりも顔を緩ませた。
「一年前我等は多くの集いし同胞の中から選ばれた! 必ずや姫を救いだし、元の世界へと帰還しようぞ!」
片膝を立て、サクが拳を握る。
「まだ時間はある。チカ先輩の記憶を取りもどして帰ろう」
マサノリも声に力を込め、拳を作った。
「帰ったら補習地獄だけど」
言いながらオレも右手で拳を作る。
ひゅっと何かが頭に乗った。
「ヤシチ?」
チカのそばから離れなかったかまいたちが、それぞれオレたちの元に飛んできた。
サカキはサクの肩に乗り、ゲンロクはマサノリの胡坐に座った。
「なんでおまえだけ頭なんだ」と、ふてぶてしい、もふもふ相手に物申してもシカトされる。
「おまえらもチカ先輩と還りたいんだよな! 我等三人、使い魔とともに姫を魔境から救出すべし!」
光の申し子、ウィリディス・フルフィウスの宣誓でオレたちは拳を合わせた。




