イッテンシカイ
(花火?)
空気を伝ってくる籠った破裂音。
頭の中で色とりどりの火花が散る。
賑やかな祭囃子が鼓膜を煽った。
ああ、そうだった。
今日は十六日か。
ハイビスカス柄の着物を着るって、はしゃいでた。
露店でチョコバナナと、どうせまた食べきれなくて半分こにしようとか言い出すんだ。
人のこと弟、おとうとって、どっちがガキなんだよ。
からからと下駄の音。
夏風に揺れる袂を追いかけて。
『シメは線香花火だからね』まとめあげた髪に剥き出しのうなじ。
彼女がふり向く。
「――かさ、司」
マサノリの声で、ぽっかりと意識が浮かんだ。
頭がぼーっとする。
なんか、まだ胃がうねってる。
吐きそう。
「平気か? 下痢でトイレに籠ってたみたいな顔になってるぞ」
サクに支えてもらってなんとか体を起こす。
「鳥居をくぐった瞬間に倒れたんだよ」
そういえば片足だけ鳥居の中を踏んだ瞬間に体が歪むような感覚になって。
なるべく鼻と口を塞いでいたのに。
わずかな隙間から吸った妖気のせいだろう。
ひどいバス酔いになった気分だ。
効果のない自衛対策に脱力感が、のしかかった。
「やっぱ、いつも、おれらのいる世界とは違うんだな」
「え?」
「来ちゃったんだよイッテンシカイに」
からり、とマサノリが障子を開ける。
どん、どんと大輪の花火が惜しげもなく上がっている。
それに混ざって笛や太鼓の音も聞こえてくる。
あたりは宵闇、と形容するのがぴったりの情景。
目の高さに空があるから、ここは建物の二階らしい。。
花火の音が心臓に響く度に頭がクリアになっていく。
周囲を見回すと和風の造りの部屋だった。
見事な彫の欄間に天井絵まである。
行燈の灯が、ちろちろ燃えていた。




