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「神隠しがいつ起こるかなんて誰にも分らねぇ。イッテンシカイ自体がなんなのかも雑魚だって分かっちゃいねぇんだよ」
不確かなものばかりで納得いくはずがない。
いつ当たるか分からないなんてロシアンルーレットじゃないか。
「物の怪を捕獲して還したって無駄じゃないか」
カタカタ奥歯が震える。
口先だけが勝手に動いていた。
「『世界』の判断基準は分からねぇ。だから物の怪を還す以外ないんだよ」
毎年の無意味な作業にとんでもない裏があった。
「このっクソジジイ――ッ!」
のらりくらりの化け狐に掴みかかる。
揺さぶられて前後した白い顔と目が合った。
その瞬間オレは血の気が引いた。
蔑む瞳が有無を言わさずひれ伏させる。
――強い。
いつも気配がないせいで感じることすらなかった。
こいつは、シロガネはとてつもない物の怪なのだと。
十三年間いっしょにいて何も分からなかった。
恐怖からなのか自分の無能さに嫌気が差したからなのか。
オレは掴んでいた着流しの襟元を離していた。
「とりあえず話はここまでだ。クソガキ、油売ってる間に、どんどんあっちに染まってちまうぞ」
襟を直すシロガネが、さも事も無げに煽る。
考えている時間はない。
「司っ!」
「おいっ待ったっ」
オレは腕で口をふさいで鳥居に足を踏み入れた。




