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「まさか数が減る、なんてことですか?」
真剣に話を聞いていたマサノリが嘲笑気味に言う。
常人には視えないものが、そんな現実的な問題を抱えているなんて結びつかない。
けれどシロガネは話を続けた。
「ただつながるだけじゃ神隠しは起きねぇ。だが住人がいなくなった『世界』はどうなる?」
「な、何もなくなる?」
生唾を飲んだサクが聞き返す。
当初は半信半疑な様子だった彼もシロガネの態度に不安を覚えたようだ。
「『家』も住人がいなくなるとガタがくるだろ。あれと同じだ」
『人が住まなくなると家って傷むのよ』
チカの声が痛いくらい胸の中で響いて、体中に弾けとぶ。
「……住人の確保のため?」
黙り込んでいたオレの言葉に注目が集まった。
物の怪の数が減り続けて世界が朽ちるなら、てっとり早い解決策は増やすことしかない。
「『イッテンシカイがやってくるよ』の文句の通りさ」
シロガネにつられて全員が石碑を見る。
「正確な数は分からねぇが、ある程度を下回るとこっちの人間をさらっていく。それがイッテンシカイの神隠しだ」
そこまで言うとシロガネは煙管の灰を地面に落とした。
這いつくばる白い霧があっさり散っていく。
「……つまり、防衛本能」
意外な事実にマサノリも言葉を切る。
「ふざけんなよっ……! だったら最初からそう言えって」
オレは叫んでいた。
世界が人間をさらう?
まるで生き物じゃないか。
元より真実は、ずっと昔から石碑に刻まれていたのだ。




