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『ちょっと取ってくる』
『ばか! 入るなよ』
神隠しを信じてはいないが、危険な場所なのは変わらない。
『うそうそ。ほんとに鳥居の真下に落ちた感じだから手伸ばせば取れるよ』
(なら大丈夫か)
チカは物の怪の耐性も強い。
さっきの狂暴な物の怪を捕獲したこともあってオレは安心しきっていた。
* * *
五分経ってもチカが戻ってこない。
『タオル取れたか?』
呼びかけても返信がない。
「おいクソガキ。見に行くぞ」
シロガネの珍しく真面目な顔にオレは胸の奥がざわつくのを感じずにはいられなかった。
鳥居の前に行くとチカの姿はなく、札を貼られた物の怪の集団とタオルだけが落ちていた。
「チッ。やりやがったな」
シロガネが苦々しそうに舌打ちをする。
“やりやがったな“ってなんだよ。
嫌な予感が、どんどん膨れあがる。
鳥居の白い二本の柱の間からはドライアイスみたいな霧が地面を這っていた。
頭と足元がぐらぐらしてくる。
『グオオオ』
(!)
突然鳥居の向こうから唸り声をあげ、巨大な毛むくじゃらの物の怪が飛びかかってきた。
「やかましい。雑魚はすっこんでろ」
自分よりはるかに巨体なそれをシロガネは指先で制する。
見せつけられる圧倒的力の差で嫌な予感が押し潰された。
胸騒ぎが、いよいよ体の内側を切り裂きそうになる。
「ああ。いい時に来たな」
シロガネの金色の目がオレの後ろをとらえた。
「司。鳥居の近く来てだいじょうぶなん? なんか霧濃くね?」
「鶴亀堂のほうに行ったら司の鞄だけあったから」
サクとマサノリがこちらに歩いてくるところだった。




