6
「情けねぇな。女の乳に挟まれたくらいでよ」
傍らでラムネを飲むシロガネが瓶の中のビー玉をころころ鳴らす。
オレは額の上に氷嚢を乗せ畳部屋で横になっていた。
チカの胸にダイブしてしまい大量の鼻血を出してしまったのである。
彼女のお気に入りだった花柄のバスタオルにもデカい染みを作ってしまい、
「弁償してもらうからね!」と強制的にローンを組まされた。
限定品の高い品物だったらしい。
「また、ごちそうになっちゃって悪いねぇ、ひ孫。タオル代よりも安いからいいよな」
シロガネの戯言が右から左に抜けていく。
(高校生が借金ってないだろ)
焦燥感かられてても、さっきのおっぱいの感触の余韻に浸ってしまう。
あの感触が頭から離れない。
タピオカ、プリン、マシュマロ、餅……。
知ってる限りの近い感じのものを思い浮かべても、そのどれにも近くてどれにも遠い気がする。
勝手に口元が緩む。
「エロガキが」
「てめぇが足引っかけたからだろ」
チカの手につかまって立ち上がろうとした瞬間、オレが倒れたのは、この妖怪狐が足を引っかけたからである。
小馬鹿にした声に唸りつつ、ぼんやりと思った。
(もしかして昨日鳥居で感じた気配はあれだったのか?)
さっきの蜘蛛みたいに体の真上から、どろどろ降ってくる妖気は初めて遭遇したタイプだった。
(分りやすすぎるくらい、悪いものって感じだったんだよな)
昨日感じたのは、あんなに単純な気配ではなかったような。
だめだ。
血が足らないのか思考が渋滞している。
スマホの着信音が鳴った。
起きて確認するとチカからのSMSだった。
『また物の怪捕まえたよ。大量大量』
札を貼った物の怪の写真が添付されている。
(大量大量って、魚じゃないっての)
物の怪たちが、まるで廊下に立たされた生徒みたいである。
続けて新しいメッセージが表示された。
『あっ! タオルが鳥居の向こうに入っちゃった』
チカが首に巻いてたタオルが思い浮かんだ。
シャワーを浴び直してオレの処置を終えた彼女は、鳥居前に行っていた。
落ち葉と笹の葉が山になると厄介だから、と毎日の掃除が欠かせないという。
次の内容にオレは目を見開いた。




