4
(なっなっなっなんでバスタオルいちまい⁉)
ぱたり、とチカの体から床に落ちた滴でシャワー浴びてたのかと理解する。
だからって、なんでバスタオル一枚なんだ。
オレの煩悩だらけの疑問など露知らず「はあっ」と大きく息を吐きだすと、彼女は一旦、店の奥へと入った。
いけないと思いつつも下から見上げる状態になっているので、バスタオルの中を目で追ってしまう。
「いっ!」
煩悩への罰なのか頭に固い物がガンッと直撃した。
(オレのスマホ!?)
よだれに胃液でべったべたになった無残な姿のスマホが目の前に落ちている。
(うそだろ)
逃げる時鞄を投げたせいで手を保護する物が何もない。
タオルもこの蜘蛛にボロボロにされてしまった。
「うげえ……」
意を決して制服のシャツの裾に手を入れてスマホを拾う。
触ったとたん、ぐちゃりという音がして悪寒が走った。
直接拾ったのと変わらない状態に、生地の撥水性の乏しさが証明されている。
他のまだ使用していない面積を探して必死で水分を排除する。
やりながら、『なんでオレはよだれと胃液を自分にこすりつけているんだ』と虚しくなった。
大方水分を取りきりスマホの電源を入れた。
(よかった。一応無事っぽい)
表示される見慣れた壁紙に報われた気分だ。
「何してんの司」
顔を近づけてきたチカに体が跳ねる。
「っいや、さっき逃げる途中でこいつにスマホ食われて」
戻ってきた彼女の手にはひょうたんが握られていた。
捕獲した物の怪を入れるもので、チカがひょうたんの栓を開けると蜘蛛は、その中に吸い込まれた。
鳥居に近いということもあり、(実際は他にも色々あるけど)保管は彼女の担当になっている。
「司。あんたもお札何枚か持ってたでしょ。どうして使わないのよ」
栓を閉めるチカに咎められ反論する。
「使ったけど効かなかったんだよ」




