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3

 熱せられたアスファルトに腕や顔がこすりつけられる。


 ようやく回転が止まった時には喉まで気持ち悪さがせりあがっていた。


「うっ、げへぇ」


 四つん這いになるのもキツイ。


 それでも背中に迫りくる恐怖から逃れようと手で地面を押して体を立たせた。


 ふらふらしながら前に進む。


 すると、かしゃりと何かを爪先で蹴った。


 二、三歩進んでから気づきふり返ると、オレのスマホだった。


 坂を転がった際にポケットから落ちたのだろう。


 拾おうと手を下に伸ばす。


 オレが拾う前に何かがスマホを取りあげた。


 そこには舌なめずりをする巨大な蜘蛛がいた。

 

 妖気からして追いかけてきた物の怪だ。


 一歩後ずさり、オレは鞄をあさる。


 手あたり次第中身を投げつけた。


 ノートに教科書、ペンケース。


 物の怪相手にこんな文房具が効果を発するわけない。


 蜘蛛が、じりじりと近づいてきた。


 投げるものがなくて鞄を投げる。


 すると、なんと蜘蛛がひるんだ。


 あっけに取られていれば鞄の中から、ぐしゃぐしゃの紙クズがこぼれた。


 オレ自身も忘れていたが、これはシロガネの札だ。


 まだひとりで捕獲をしていた頃のものを入れっぱなしにしていたようである。


 蜘蛛が立ち往生しているうちに先を急いだ。





            * * *





「はぁっはぁっはぁっ」


 緑色の木々と瓦屋根が見えてきた。


 切れ切れになる息を引きずって木枠のガラス戸にしがみつく。


 最後の力をふり絞って横に引いてオレは鶴亀堂の中になだれ込んだ。


 コンクリートの床が冷たくて気持ちいい。


(なんとか逃げきった)


 もう一歩も動けない。


 オレは完全に油断していた。


 店の出入り口のサッシの上をまたいで倒れている。


 つまり戸は開いたままである。


 地響きのような音がしてふり向いた時には、オレは蜘蛛の腹の下にいた。


(食われる!)


 恐怖で目をつぶる。


 ――が、何も起きない。


 恐る恐る片目を開けると蜘蛛の顔面には札が三枚貼られていた。


 そしてその札を貼った指の主はバスタオル一枚で立っていた。


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