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「おいおい。お勉強だけは優秀なお坊ちゃんが宿題しなくていいのかぁ?」


 スマホを持ったまま机に突っ伏しているとシロガネが覗き込む。


「うるせぇ。クソジジイには関係ないだろ」


 オレは、ばっと画面を伏せた。


「物の怪には受験なんて無ぇしな」


 シロガネはジャンプしてベッドに飛び込むと、背中を向ける。


 大きな耳が上下に動いてすすきの群れみたいに尻尾が揺れている。


 狐耳と九本の尻尾が生えた親族を喜ぶのは小さな子供だけだろう。


 本当にこいつは(一応)オレの曾祖父なんだろうか?


 チカのばあちゃんから聞きかじった話では相当いい加減な性格だったらしい。


(それにしても勝手すぎるんだよな)


 物の怪捕獲はオレたちに押しつけて自分は高見の見物。


 出入り口の鳥居を塞ぐこともしない。


 金持ってない癖に鶴亀堂でツケにしようとするし、結局オレが支払っている。


(ひい祖父さんがひ孫にたかるかよ)


 おまけにオレはシロガネが人間だった頃の顔は知らない。


 写真嫌いで絶対に撮らなかったようである。


 今となっては確かめようもない。


 そうなるとこの妖怪狐が曾祖父かどうかすら怪しい。


 当時ガキだったオレもよくこんなヤツを信用したもんだと思う。


 視えることを初めて肯定されて嬉しくなって。


 純粋な子供心につけ入るあたりが、まさに”きつね“らしい。


 スマホを表にして机に置くとチカからの新しいメッセージが表示されていた。


『明日はいよいよ盆入りだね』


(嫌なこと思い出させるなよ)


 続く四日間のことを考えると気が重くなる。


 物の怪は入ってくるけど、どうせ神隠しは起きないだろ。


 今日、鳥居の前で感じた嫌な気配も開通しかけているか、向こうにいる物の怪のせいかのどっちかだ。


 物の怪は種類によって出す妖気が異なるのだから。


 事実を知らない連中が騒いでいるのも、都市伝説でしかないのだから。




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