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「社さんの家とは付き合うなって言っているでしょう。あんな子と関わるからあなたの体調も良くならないのよ」


 母はため息まじりに顔をしかめた。


 ひさしぶりに会ったというのにお説教かよ。


 母は大学の教授で出張が多く、ほとんど家で顔を合わせることはない。


 まるで形式化したようなやりとりに言い返すのも面倒だ。


「あなたの成績なら県外のもっと優秀な高校に行けたのに。今の学校じゃレベル的に医学部受験に不利なのは分かっているでしょう」


 現実主義者の母は、非科学的なことを一切信じない。


 テレビで占いコーナーが映ったとたんチャンネルを変え、雑誌の占いページは破り捨てる。


 神仏すら嫌っていてオレの物の怪アレルギーについても否定している。


 数十年前の神隠し騒ぎによって執拗な嫌がらせを受けたからだ。


 医者になることを強要するのも、浮世離れな生活をしていた曾祖父とは正反対にある道を歩ませようと考えからだった。


 あんなアレルギー源がうじゃうじゃいる場所なんて逆効果だけど。

 今のオレだって周囲の反応が不快なのだから、より近い立ち位置にいた母はもっとひどかっただろう。


 そのことだけは同情しているが、なんでもチカのせいにしているのは腹が立っていた。


 非科学的なことは信じないくせに彼女のことを引き合いに出すのは矛盾している。


「どうやったら、こんなつんけんした孫ができんのかねぇ」


(それも、てめぇが原因な気がする)


 いつの間にやら家の中にいるシロガネがしげしげと母の周りを旋回していた。

「司。聞いているの?」


 口で言っても堂々巡りをするだけだ。


 オレは鞄から受ける予定の医大の過去問を渡した。


 補習と物の怪捕獲の合間をぬって解いたものである。


 パラパラとページを流し見る母の目が満足げに丸くなる。


 その好機を見逃さずにオレは階段を昇った。「成績に問題はないわね」という声が後ろから追ってくるのは無視した。


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