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「ひとりで平気かよ」
「じゃあウチに泊まる?」
互いの家の玄関前での会話。
オレとチカはお隣さんだ。
「ばか。付き合ってもないのに、女子ひとりのところに泊まれるかよっ!」
「幼なじみなんだから別にいいじゃない」
彼女のけろっとした受け答えに、やぶへびだったと後悔した。
結局異性として意識していないと言われているのと同じじゃないか。
チカの両親は旅行中で、あと一週間は帰ってこない。
そんな時に、ばあちゃんが入院してしまい、なんとも厄介である。
もちろん両親は知らせを聞いて早々に帰宅しようとしていたが、『大事にはならなかったし、心配ないよ』とチカのほうから断ったのだ。
この間見舞いに行ったら、ばあちゃんは、ぴんぴんしてしたし、病院食だけじゃ足りないと売店の総菜パンも食べていた。
勝手についてきたシロガネも『このばばあはしばらく、くたばらねぇ』と面白くなさそうに言っていたくらいで。
ばあちゃん自身はまったく問題ない。
「戸締りだけはちゃんとしろよ。一応女子なんだから」
「わたしより、司こそ明日倒れないでよね」
「うるせ」
オレは鞄から鍵を取り出すふりをした。
ガチャリとチカが鍵を開ける。
彼女の姿がドアの向こうに入るのを見届けてから、オレも家の中に入った。
「お帰り」
「……ただいま」
珍しく出迎えた声に肩が強張った。




