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「弟がいじめられているのに、黙っていられるわけないでしょ」
「一コ上だからっていちいち姉貴ぶるなよ」
副会長の言ったことよりも、こっちのほうが、ぐさりとくる。
「かわいい弟みたいなものよ」
「やめろって!」
犬の頭を撫でるみたいに髪の毛をぐちゃぐちゃにされた。
(やってらんねぇ・・・・・・)
沈んでく気持ちを持て余しながら鞄を肩にかける。
「まって! うまく漬かったから食べてよ」
帰ろうと足を踏み出したら、ぐいっと後ろに引っ張られた。
チカは“ただいま準備中”の札を下げて戸を閉める。
レジカウンターの奥は小上がりになっていて、そこのガラス戸を開けると畳の部屋があった。
さらにその奥には小さな台所とシャワー室があって軽く生活できそうな状態だ。
チカのばあちゃんも、よくここで寝泊まりしていたりする。
「毎日店開ける必要はないんじゃねぇの?」
畳部屋の窓を開けようとしたら、またサッシが引っかかった。
築四十年は経っているので、あちこちガタがきていても普通なんだけど。
両手で力を込めてやっと開けられた。
「人が住まなくなると家って傷むのよ」
台所の窓を開けるチカの姿に同棲っぽいと思ってしまうのも何度目か。
冷蔵庫からぬか床を取り出す仕草がよけいに妄想をはかどらせる。
「どうぞ召し上がれ」
いかにもな台詞で丸ごと一本のきゅうりのぬか漬けがちゃぶ台に置かれた。
「切ってくれてもよくない?」
「ぬか漬けは丸かじりが一番おいしいでしょ」
言いながらチカもきゅうりをかじっている。
(うまっ!)
この間のもうまかったけど今回のもうまい。
夢中でボリボリかじっていれば、にまにましたチカの顔が目に入った。




