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「もう心配し過ぎだって」


 すぐ前を歩くチカが困ったように笑う。


「明日盆入りなんだぞ。油断してたら危険だって」


「だいじょうぶよ。お札の予備もたくさん持ってるから。あんたこそ鳥居に近づいていいわけ?」


 神隠しの言い伝えがある鳥居は鶴亀堂の裏にある。


 元々鳥居があった敷地内の一角に建てられたそうだ。


 生い茂る木々で日差しが遮られ、昼間でも薄暗い。


 足を進めるごとに空気が重く湿っていくのを感じた。


 徐々に真っ白な鳥居が大きくなる。


 その柱の奥はなぜか竹林になっていた。


 何度来ても不気味である。


 ここは物の怪たちの出入り口。


 妖気も濃い。


 さすがに、まだ開通していないから、こちらへ侵入する物の怪の姿はないけれど、頭がふらつく。


(今年も倒れるの決定か)


 オレは諦めつつ少し離れたところでしゃがんだ。


「わたしたちが物の怪捕獲を始める前だって、神隠しなんてなかったじゃない」


 竹ぼうきで落ち葉を掃くチカの周りでは、ヤシチたちが軽いつむじ風を起こして落ち葉を集めていた。


 シロガネの神隠し(とされていること)が起きた数十年前以降、神隠しは一度も起きていない。


 一昨年も去年も、何も起きなかった。


 オレの中で遡れるだけの記憶を遡っても神隠しが起きた覚えはない。


 鳥居のすぐそばにある石碑を一瞥する。


 さっきマサノリがスマホで見せたやつだ。


童歌わらべうたって変な恐さがあるよな)


 ひらがなとカタカナだけで彫られた歌詞は、ある種の残酷さを無意識に感じてしまう。


 鳥居の向こうも竹林で、うっそうとしている。


 ただ単に風で枝が揺れているだけなのに不気味だ。


 涼しいっていうより寒気がしてオレは腕をさすった。


「どうしたのー?」


 チカの声に顔を向けると、ヤシチたちが彼女の背中にしがみついて、ぶるぶると震えている。


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