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シロガネがラムネ片手に横に立っている。
ガラス瓶の中でビー玉が転がり、無数の泡が立ち昇っていた。
「シロガネさん! 勝手にウチの商品飲まないで! 万引き禁止」
会計をしていたチカの怒号が響く。
「金ならソコに置いといたろ」
シロガネは、かったるそうに返事をした。
「木の葉は日本の通貨になってません!」
数枚の葉っぱをチカがヒラヒラさせている。
(ガキかよ)
昔話によくある『狐が木の葉を金にして人間を化かす』というやつだ。
このクソジジイの場合、最初から木の葉を置いとくだけだが。
「ツケにしといてくれ」
「一円玉も持ってない狐さんが何言ってんのよ。司、ラムネ代一本追加ね」
反省の色のない彼に軽蔑の視線と向けていると、容赦ない幼なじみの督促が飛んできた。
「なんでオレが!」
「いくら三世代前で、神隠しにあってることになってて、今は物の怪でも。身内でしょ」
「だからってなんでいっつもオレなんだよ」
「サクくんとマサノリくんに請求するのは筋違いでしょ」
チカは、まったくもって抗議に取り合わない。
(そっちがサービスするとかの選択肢はないのかよ)
「悪ぃねぇ。ひ孫」
絶対思ってない。
これで何度目だよ。
ぶん殴りたいくらい清々しい顔のクソジジイが、一ミリも感謝のない言葉を口にする。
「あとラムネ一本」
胡麻煎餅をカウンターに置いて自分の分のラムネを注文し、代金分の小銭をトレイに置いた。
「その都度払うの損した気分になるんだけど」
「塵も積もれば山となる。少額だって溜まったら大きいんだから。借金といっしょよ」
正論である。
オレは、でかいため息を吐いて店の外に出た。




