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(わざわざ補習帰りに寄らなくたっていいのに)


 必要のない補習に参加なんて時間の無駄じゃないか。


 女子の思考って本当に意味不明だよな。


 がらがら、とガラスの引き戸が開き、少しかび臭い空気が流れた。


 ワンルームマンションくらいの店内には、山盛りの駄菓子が目一杯並べられている。


 天井からも菓子が釣り下がっていて、体を横にして頭を低くしないと歩けないくらいだ。


「やっぱ駄菓子屋は学生のオアシスだよな」


 サクはスナック系を中心に腕に抱え込んでいく。


「今月ピンチなんだろ? 必要経費は残しとけよ」


「テンション下がること言うなよな」


 マサノリの忠告にサクが唸る。


「そんなちっこいの買わなくたって、でっかいのあるじゃんよ」


「このサイズを食べるのがうまいの」


 マサノリの買い物かごには、小さい容器の駄菓子がいくつも入っていた。


 サクの言う通り、この駄菓子は大容量サイズも売っている。


 結果として食べる量はいっしょでも、小さい容器で食べることが彼のこだわりなのである。


 他にカリカリした梅や酸っぱい昆布、大根を漬けたものなど酸味のある駄菓子が入れられていた。


(あ。あった)


 オレは目当ての胡麻煎餅を二枚手に取った。


 小さい頃は棚に手が届かなくて、よく背伸びしていた。


 それでも届かなくてチカのばあちゃんが代わりに取ってくれていたんだけど。


 あの頃は頭上に広がっていた夢の世界を今は余裕で見渡せる。


「司。それ昔っから好きだよね」


 鶴亀堂に入る度に浮かんでしまう、ほんの少しの優越感に浸っていればチカが横やりを入れた。


「そっちだって味覚がガキのまんまだろ」


「あんたと違って夢があるのよ」


 持っているチョコ菓子の容器をふって見せる。


 中からシャカシャカと音がする。


「あんまりふるとビスケット折れるぞ」


「力加減してますから」


 棒状のビスケットに、チョコクリームとトッピングをつけて食べる駄菓子でチカの好物だ。


 小1くらいの頃、チカは、この駄菓子をマラカス代わりにふりまくって、開けた時にはビスケットがすべて折れていたという悲劇をよく起こしていた。


「『ビスケット割れちゃったー!』ってギャン泣きして司に宥めてもらったよね。効果なかったけど」


「自己責任だろ」


 当時、まだ幼稚園生だったオレには、顔を真っ赤にして泣きまくる彼女を宥めるのは難題でしかなかった。


 周囲の大人からは“女の子を泣かせて”という目で見られるし、色々大変だった。


「チカせんぱーい。会計お願いしまーす」


「今行くね」


 サクに呼ばれ、チカが小走りでレジ台に向かう。


「エロガキ。女のケツばっか追いかけてんじゃねぇよ」


 ポニーテールの揺れる後ろ姿を見ていると、イラ立ちしか湧きおこらない声が、つむじを突いた。


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