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(えっ? え?)
わずかに息を吸い込めば嗅いだことのある制汗剤の匂いがする。
混乱しつつもオレの気持ちは妙な方向に高ぶった。
オレはチカの胸に顔面から突っ込んでいたのだ。
(やばっ。すんげぇやわらかい)
女子のおっぱいってこんな感じなのか。
予期せぬ初体験に内心では盛大に感動していた。
密着して暑苦しいはずなのに、彼女の匂いがこもった熱気が心地いい。
もっと吸い込みたくなる。
「エロガキには灸を据える必要があんだよ」
「昭和の根性論は時代遅れです」とチカがオレの体をべりっと剥がすようにベッドへ押し戻した。
のぼせた頭が数分ぶりの酸素を吸って冷やされる。
ふたつの感情が心を水浸しにした。
ひとつは『残念』という言わずもがなもの。
もうひとつは――・・・・・・。
「ひ孫はもっと労わってくださいね。ひいおじいちゃん」
「年取るとどうにも耳が遠くなってね」
男子の顔が胸元に突っ込むという事態なんてなかったかのように、チカはシロガネに詰め寄っていた。
「不老不死の狐さんが何言ってんのよ」
シロガネは耳に指を押し込み、視線をあちこちにやっていた。
「こんなに大きい耳して聞き漏らすなんてことないでっ……逃げたわね」
チカが狐耳を指で引っ張って怒鳴り始めた瞬間、シロガネは文字通り煙に巻いて姿を消した。




