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「シロガネさん。人間の領域に侵入してきた物の怪を元いた世界に戻すのはいいですが、神隠しのことについてもっと有益な情報を教えてもらえませんか」


 マサノリが怪訝な顔をする。


「物の怪がいるのはガチだったけど、やっぱり神隠しは都市伝説だったんじゃなねぇの?」


「だったら、この石碑はどう説明するの?」


 呑気な声のサクにマサノリがスマホの画面を突き出した。


 画面には鳥居のそばにある石碑とそれ刻まれている童歌が載っている。



 このはが おちるよ


 とりいの むこうから やってくるよ


 イッテンシカイが やってくるよ


 ひとをさらいに やってくるよ


 みたまの かえる よっかのま


 とりいに はいると



「『このはがおちる』は八月の旧暦である葉月を指す言葉。『よっかのま』は夏のお盆。『イッテンシカイがやってくる』っていう部分は、人間世界とつながることで物の怪が入ってくる期間と一致してるし、関連性がないとは決めつけられない」


「偶然じゃねぇの? 司が有名人になるきっかけを作ったひいじいさんは、そこで寝てるし」


 力説するマサノリに対し、サクが空返事でシロガネを指差した。


 “やってくる“って言い回しは少し引っかかる。


 まるで生き物みたいだ。


 催し物や流行、運などにも使われる言葉だから不自然ではない。


 神隠し自体は天狗の仕業ともされていたのだし。


 でも、イッテンシカイは物の怪が住んでいる世界だ。


「世の中、ちったぁ謎を残しといたほうが浪漫があんだろ。ダテメガネ」


「人智の及ばぬ事象を調べるのがオレにとっての浪漫なので」


 マサノリがメガネのブリッジを指で押しあげる。


 レンズに度は入っていない。


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