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「ブラックバイトみたいだね」


「就職の予行演習かよ」


 オレたちは物置小屋で死んでいた。


 あのあと『ここはもういいから池の掃除しろ』とあの物の怪魚の苔取りをさせられた。


 何度も池に引きずりこまれそうになり、つむじ風を起こしてオレを何度も救出したヤシチも爆睡している。


「ボクは廊下で雑巾がけしてたら桶を蹴飛ばされた。古典的すぎ」


 マサノリとゲンロクもぐったりだ。


 仕事はどんどん押しつけられるし、鬼は見張ってるし。


 きっと社会出たらこんな感じなんだろうって思ったらピーターパン症候群になるのも普通だよな。


「なぁなぁ! 証文とりもどせばいいんじゃね?」


 何か足りなかったのはサクが静かだったからだと彼の声で気づいた。


「証文?」


 いわゆる契約書だ。


 顔を見合わせるオレとマサノリにおかまいなしにサクは興奮気味に語る。


「チカせんぱいの証文があるんだって‼ 証文って契約書じゃん。契約書をこっちが持っていればチカせんぱいは廓を抜けられる」


 サクが言うにはトイレ掃除中、こっそり差し入れをくれた物の怪がいたらしい。


 そいつから証文のことを聞いたそうだ。


「江戸時代の理屈ではそうなるけど、ここは妖怪の世界だし。その手が通用するかどうか」


 オレもマサノリに賛成だった。


 第一そんな手があるなら、あのクソジジイが言わないはずがない。


「シロガネさんが言わないのもおかしいし」


「司もマサノリもあのじじいを信じてるけどさっ! あれが司のひいじいちゃんって分かるもの何もないんだろ?」


 サクが両腕を広げて同意を求める。


「落ちつけってサク」


 話すごとに興奮が激しくなる様子に違和感を持った。


「この世界で信用がおけるのはシロガネさんしかいない。証文のことはやめておこう」


 オレとマサノリはサクの肩に手を置く。


「その信用してるヤツが出てったまんま戻ってこないじゃんか! ひ孫が大ピンチだってのにさ。少しでも方法あるなら試そうぜ!」


 結局平行線をたどるだけで、サクとは意見が割れてしまった。










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