罠
長い二日酔いみたいに頭がガンガンしていた。
根本的な解決にはならなくても飲まないよりはいい。
枕元に手を伸ばし印籠を探す。
根付けが指にぶつかって拾いあげ、目を開けると蜘蛛がいた。
(ひいいい!)
ただの蜘蛛だと分かっていても寝起きにどアップは気持ち悪い。
顔に足先が食いこむし、変な汗がだらだら流れる。
前脚をしゃっと上げたのでオレは目をつぶった。
すると鼻のあたりにあった何か乗ってる感じがふっとなくなる。
薄目を開けると蜘蛛は糸で天井に戻っていくところだった。
まだ妖気は薄いけれど、この環境じゃいつ物の怪になるか……。
寝て起きたから、朝だと信じたい。
でも、この世界来てから一秒たりとも時間は進んでないように、貼りつけたような闇夜が覆っている。
もう何日めなのかすら数えようがない。
チカが無事なのかどうかも。
(どうすりゃいいんだ)
吐き気と頭痛で思考がずぶずぶ沈んでいく。
『なぁなぁ! 証文とりもどせばいいんじゃね?』
昨日のサクの提案が泥沼の脳内をかすめた。
マサノリと反対したけれど他に何もいい手が浮かばない。
うまくそれを実行するしかないと考え直し、オレはサクを起こそうとした。
しかし、隣りで寝ていたサクはいなかった。
「マサノリ! サクがいない!」
「……え? あいつ本当に証文取りにいったの?」
『ぴいぴい』
オレとマサノリの声でヤシチとゲンロクも目を覚ました。
サカキの姿もない。
もしサクたちが証文を取りにいったのなら、お歯黒べったりのところにいるはずだ。
物置を飛びだし、オレとマサノリは奥の座敷へと走った。




