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義体の女神  作者: 鈴木亜紀
第一章
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スクランブル④

 ヘルメットに映る映像には常にアルバトロスの位置が示されていた。レーダーに入らないように距離を取りながらやり過ごし、後方の敵機の元に向かう。

 基地からここまではネローザの速度に合わせていた。特機ではあるが後方支援・超長距離射撃を目的として開発されたため、機動性は量産型とさほど変わらない。

堰を切ったように加速する。

 変わらない景色で鈍るスピード感の中でも、その加速は負荷として体に伝わってきた。

 加速度によってシートに押し付けられる。

 正面からの警告音。

 最高速度を出す前に敵機がレーダーに入った。

「敵機、三機確認」

 速度を保ったまま、バズーカを構える。

見下ろすような形でクラスター弾を放った。空中で破裂したそれは細かい小型爆弾をまき散らす。

 編隊を組んで進行していたアサルトは方々に散り、爆撃を交わした。が、その先には既に黒椿がライフルの狙いを定めていた。

照準が敵をなぞる。

「一機撃墜」

 ガトリングによる反撃を避けながら上空を通りすぎる。十分に距離を開けてから旋回し、敵を正面に迎えた。

 機動性を活かした一撃離脱戦法。

 二機のアサルトは互いに援護できるように左右に分かれて待ち構えていた。どちらかを攻撃しようとすれば、もう一方に横から狙われる。それを分かった上で右の敵に狙いを定めた。

ユキは戦法を変えるつもりはない。

そもそも他の戦い方を知らなかった。

 右から回り込むように敵機に近づく。これで一方からの攻撃になった。

 二発目のクラスター弾の狙いを定める。離れた二機の間、砂しかない地面を爆破した。

 巻き上がる砂塵。

 その砂塵の陰になるように急降下する。標的を見失った一方のアサルトは沈黙した。

 もう一方は砂塵を背に黒椿に銃口を向ける。

「……!」

 ガトリングとライフルふたつが火を噴く。

ユキにはそのタイミングが分かった。

それだけではない。どこを狙い、どれだけ撃ち続けるかも分かった。

頭では分からないが、感覚で分かった。

機体をどう動かせば当たらないかが分かった。

黒椿はショットガンを放つ。

 一発目でガトリングを破壊。体勢が崩れる。

 二発目で右ライフルを破壊。攻撃が止まる。

 三、四発目で胸部を破壊。爆発する。

「敵機撃墜」

 初陣の緊張で、いわゆる第六感というやつが目覚めたのかもしれない。追い込まれて直感が冴えているのかもしれない。

 しかし、見知らぬ感覚に酔いしれている時間はない。まだ一機残っている。

 それは砂塵を避けるように迂回して現れた。移動しながらの攻撃。味方機がいなくなったため、ろくに照準を合わせず乱射してくる。

黒椿は影だけを残し、空に舞い上がっていた。

 ユキの不思議な感覚は未だに続いている。

 銃弾は見えないが攻撃をする気配が見えるような感覚だった。アサルト一機程度なら視界に入れなくても対応できる気さえした。

「……これで最後!」

 最後のクラスター弾。

広範囲に広がる小型爆弾を避けきれず、直撃、ほぼ同時に爆発した。

 敵機の破壊、周囲の敵影を確認する。

「敵影なし。任務完了」

 敵がいなくなると不思議な感覚もなくなった。今にして思えば銃弾の飛び交っている間のみ感じていた。

 考えていても違和感の正体が分かるわけでもない、と身を翻しソフィアのもとへと向かう。

「あっちももう敵倒したのかな」

 ユキは体に負担のかかるような加速はせず、慣性に従うような速度で帰路を進んだ。


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