24、少し離れた方が君は僕の事に興味を持ってくれるのかもしれない。(マティウス視点)
ストレンジ歌劇場での賊の侵入事件を色々調べた結果、平民の犯罪組織の一つが富裕層を狙って計画を立てた事件であることが分かった。
本来なら届け出なければいけない精神を操る魔法を使える平民が犯罪組織に居たことで、今回の事件を思いついたらしい。
多少の不自然を自然に思わせるくらいの精神魔法だったらしいが、歌劇場が偶然にも改装中だったこと、民間の歌劇場だったため多少金を握らせれば融通を効かせてしまう勤務の浅い従業員が居た事、歌劇場の下調べをあまり魔力のない騎士たちが中心になって行ったこと、僕が下調べは終わったと思って完全に油断していたのが原因だろう。
マティルダの時は完全に自分がナタリー嬢の友人のような気持になって油断していた。
偶然に偶然が重なったような事件だ。
そもそも平民に精神魔法が使える者が現れれるのはなかなかないため、再現性がある事件とは思えないがそういう油断が命取りだ。
ナタリー嬢が一緒に居るのに油断していた僕がいけないと思う。
これからはもっと気を付けなくては。
………それから、もう、あんな風にマティルダの正体がバレてしまった以上、マティルダとしてナタリー嬢の文化視察活動に参加することはできないだろう。
もう、ナタリー嬢を卑怯な真似をしてだますことは絶対にしたくない。
もちろん、やっぱり僕は卑怯で、ナタリー嬢が僕を心底嫌になって、『婚約を解消したい』という意思を見せるまではナタリー嬢の婚約者座を誰にも譲りたくないのだけれど。
傷つきたくない、失敗したくない、ナタリー嬢の興味の引けない僕でいたくない…………なんて事を考えずに、きちんと王太子としてしっかりやっていきたい。
僕はあれから、ナタリー嬢とどのように接していければ良いか、色々考えてその結果、今回の事をきっかけにナタリー嬢の言ったことをやってみることにした。
『マティウス殿下はそのままで、『マティウス殿下は理想の王太子である』という演技をなさるのはいかがでしょうか?』
と以前言われたことをそのままやってみることにしたのだ。
最初はなかなかうまくいかなくて、ナタリー嬢も戸惑っていたりしたけれど、何回もやってみるうちにうまくできるようにもなってくる。
そもそも、思い付きでマティルダ・ユーリーという架空の人物を演じていた僕だ。
マティルダ・ユーリーを白いヘッドドレスとロングドレス(中はズボンになっていて完全なスカートじゃない)を身にまとうと、ナタリー嬢の取り巻きの女性のように振舞えたように、王太子にふさわしいとされる上等すぎる服(そもそも僕がいつも着ている服は大体僕が選んでない)を着ると、だんだんスイッチが入ってできるようになってきた。
そんな演じている王子をナタリー嬢に見せると、ナタリー嬢は微妙にもじもじしているのも可愛い。
段々僕は演技に慣れてきているけれど、ナタリー嬢は僕が時々演技に失敗してると、懐かしいようなホッとしているような表情を見せる。
今までよりもナタリー嬢が僕に関心を持ってくれているような気がしていた。
先日も、直前にスケジュールがあって、ナタリー嬢がバレエを見にいくとのスケジュールに合わせられたので、別で行って王族専用席で見ていると、以前、マティルダの時にナタリー嬢と一緒に盛り上がったシーンがあった。
(ナタリー嬢はどういう反応をしているだろう?)
そう思ってナタリー嬢がいるバルコニー席の方を見ると、ナタリー嬢がこちらを何か言いたそうに見ているのに気づいた。
いつもナタリー嬢の心をとらえて離さない『神の世界の作品』を見詰めるよりも、僕を見てくれたことが嬉しかった。
『ナタリー』
思わず、声を出さないで名前を呼ぶと、ギョッとしたようなギョッとした自分に驚いたような顔をして俯いた。
(……きっと君は今、僕のことばっかり考えてくれている)
ナタリー嬢が戸惑っているのに、喜んでしまうダメな僕だった。
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