23、これでこそ魔法学校というような活動をしたいと思います。
貴族学校に入って数日が経った。
学校の授業は正直、高位貴族ならもう家庭教師に習ってやってしまっている所がほとんどで、後は確認のようなものだ。
学期ごとのテストを、高位貴族達は別室で受けて、勉強する範囲が分かっていれば、授業はある程度自由に受けることになっているし、前世の日本みたいにそれぞれの教師が詰め詰めの授業をしているわけではないので、頼めば教師からある程度少人数で特別授業も受けることができる余裕のあるスケジュールになっている。
マティウス殿下は、真面目で学習の基本や復習を大事にする性格なので、時々気になるところを側近候補の他の生徒と授業を受けたりしているようだ。
私は、基礎的な勉強は良しとして、自分の結界魔法をもう少し工夫できないかと魔法理論の先生に特別授業をお願いして受けている。
もちろん、侯爵家のお金ではいくらでもその道の先生を独自に雇うことはできるけれど、なんと言ってもここは王立学院だ。
王家が広く貴族たちの為に運営しているので、ここの先生に習うのはお金の問題じゃなかったりする。
無理を言えば、侯爵家に来させることはできると思うけれど、それはしたくない。
この世から遠くない未来にいなくなる身としては、『立つ鳥跡を濁さず』の精神でいたい。
そうそう、魔法理論の先生と共同開発したと言っても過言ではないが、ステルスの結界魔法を開発した。
結界魔法の光の屈折度をうまく操作して周りの景色をコピーしたりして、うまく溶け込む景色を映し出す結界魔法の中に隠れることができるようになったのだ。
さすが私は悪役令嬢だ、色々な事ができる。
この結界魔法で隠れながら、ヒロインのルーチェ・マーキスさんが国語の教師に、
「得点が足りない子はお仕置きだよ………」
と注意されているのも見てしまった。
国語の教師を攻略するなら、今一つ勉強のステータスが足りないようだ。
後は、乙女ゲームのヒロインらしくマティウス殿下を探して近づこうとしているのも見てしまった。
そして、『悪役令嬢はどこよ……』と呟いているのも聞いてしまった。
ルーチェさんは、そう言ってキョロキョロしながら、私の側から離れていく。
近くで見たルーチェさんは女の子らしさに溢れていて可愛かった。
そして、
「ナタリー嬢? そこで何をしているのかな?」
ヒロインに近づかれようとしていたマティウス殿下に見つけられてしまった。
正確には、マティウス殿下の『魔法』ステータスがアイステリア王国の王族としてあまりにも高いから、まだまだ習得したての結界魔法に隠れている私が魔法の気配で分かってしまうのだろう。
廊下の隅の角に追い詰められて、私は渋々ステルス結界魔法を解除して姿を現した。
「ごきけんよう、マティウス殿下。そうですね…………学び舎の春の訪れを眺めておりました」
王子を追いかけまわしているヒロインを見ていた、とは正直に言う訳にはいかないだろう。
もしかしたら、マティウス殿下もあんなピンクブロンドのかわいいルーチェさんに追いかけられて悪い気はしないのではないだろうか……、あんな風に可愛くなれない私の僻みだけれど。
というか、ヒロインを私が動かせる侯爵家の者にも調査させているけれど。私もヒロインをみておきたい。
私が処刑される理由なのだ、ヒロインは。
ちょっとくらい、ステルス結界魔法に隠れて盗み見してもいいはずだ。
「ナタリー嬢、何が誤解があるみたいだね」
マティウス殿下が少し困った顔をして、距離を詰めてくる。
……ちょっと近いと思う。
…………健全な男女の距離を保つべきだと思う。
「ね? ナタリー嬢」
私の顔の横の壁にマティウス殿下が手をついた。
エメラルド色の綺麗な目が私を覗き込む。
最近、キラキラ演技がうますぎてなんかずるい。
「ご、誤解などありませんっ」
あまりにも近すぎる距離に私は、なんだかもう頭が煮詰まってしまって、はしたなく早歩きでその場を去った。
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