第32話
魔獣の森に程近い町。
そこで俺たちは宿を取った。
3日の予定で部屋を借りて、居心地が良さそうなら、延長する予定だ。
「さあ、皆。魔獣の森が如何なる場所なのか、偵察程度でも良い、様子を見に行くぞ」
それを聞いた、奴隷達の足取りは重かった。
「さあ、早く、早く!
今日から、収穫が良い日は食事を豪華にするぞ!」
そう言われて、ようやく陣形を作り、魔獣の森へと入って行った。
薄暗い森の中。そこかしこに、何らかの気配を感じる。
陣形は、前衛の中央にゼロ、右にワンで左にヨン。
真ん中にロクとナナ。
後衛にイチとナインだった。
「敵には、正面からしか、襲撃させないようにするぞ!
むしろ、コチラから真正面から立ち向かうつもりでな!」
ゼロは、そう云いながら、真正面から少し右側の藪に雷撃を放った。魔犬が3頭燻しだされて、襲い掛かって来た。
「メソッドを展開!インスタンス、ナナ!引数、魔犬3頭、スタック!リピート12回、斉射!石礫12連射!」
「メソッドを展開!インスタンス、イチ!引数、魔犬3頭!斉射!フレイムストーム!」
「メソッドを展開!インスタンス、ナイン!引数、魔犬3頭!斉射!ブリザードストーム!」
幾ら魔獣の森の魔犬3頭と云えども、女性陣3人の魔法の前には、あっさりと倒される程度でしか無かった。
全て、ゼロが3人の為に組んだ魔法のメソッドであった。
「容赦無いなぁ………。
まあもっとも、犠牲者が出るよりはマシだけどね。
犬の肉は、確かそこそこ美味しいんだ。解体しておこう」
次の敵の視線を感じながら、ゼロはさっさとメソッドで解体を施す。肉の可食部と毛皮。収穫は、その程度だ。
「次、前衛だけで仕留めるぞ。
後衛は、攻撃準備をして、危ないようなら打て。
ナナさんとロクちゃんは、回復魔法に努めて」
「「「はい!!」」」
ナナさんには、念の為、奴隷紋を治さない回復魔法を仕込んでおいた。勿論、同じ回復魔法をロクちゃんにも。
俺含め、前衛3人は盾と武器を構えている。
「………ん?」
油断が大敵なこの状況下で、不意に空を見上げた。
「………?
どうかしましたか、ゼロさん」
「いや………、水暴走が止まりそうな気配がする」
「………?」
「重要な情報ではあるが、今の俺達にとっては些事だ、気にするな。
さあ、気を引き締めて行くぞ!」
「「「オオオッ!」」」
良しッ!気合の入った良い返事だ。コレならば、先方の藪に隠れたゴキブリン3体も、問題にはなるまい。
「3体来るぞ、ゴキブリンだ。左前方!」
メソッドを展開!インスタンス、ゼロ!引数、左前方の藪!
「雷撃極大!」
ズドンッ!
強い雷が落ちた。炙り出される、ゴキブリン3体。
「押さえろ!」
俺はその内の1体、中央の奴に盾を叩き付ける!
もう、ソイツはロクに足腰が立たなくなっていたが、左右のゴキブリンも似たような感じだ。が、放置状態だ。
「何やってる!盾をぶつけろ!」
俺に言われてようやく、ワンさんとヨンさんは突撃した。
亜人並みの体格をした虫であるゴキブリンは、まあ、見た目は怖い方だろう。が、そこに突撃を躊躇うようでは、今後、命が無い。
雷で弱っていないのならば、左右から俺を挟み撃ちもあり得た。
今日は、どうやら前衛の二人に大反省会を行わねばならぬようだった。




