第30話
魔獣の森に行く。
その申し出に、賛成の声は上がらなかった。
「命を捨てに行くようなものです。お止めください」
「全体の強さを底上げしたい。
正直、半端な気持ちじゃない。
皆の反対を押し切ってでも行きたいと考えている」
そう云われると、奴隷の身分である皆に、否やのあるわけも無かった。
「で?どう我々を鍛えるのです?」
「レベルアップ、という経験を、皆はしたことがあるかな?」
皆は顔を見合わせるが、唯一、ワンが。
「魔獣を沢山狩れば、出来る事がある、とは聞いたことはありますが」
そう告げるのみ。
「いや。俺の場合は、『全ての数には意味があるのではないか』と仮定した時に起こしている。
レベル4までは一般的に上げることが出来る。
レベル6までは、選ばれた者なら上げる事が出来る。
レベル7は、レベル6の者の一部が、死の淵に立った時に、一時的に到達する事が出来る。
レベル8以上は、俺の基準で考えた時、到達不可能なレベルと言える」
そう言い切ってから、こう更に付け加えた。
「俺はコレを『神格レベル』と呼ぶことにしている」
皆が、呆然と聞いていた。
「ゼロさんは、何レベルなんですか?」
「うん、6レベルかな?」
「………ソレは、根拠のあるお話なんですか?」
「人生経験の積み重ねで到達した知識だ」
皆、『神格レベル』そのものに対して、疑問は抱いていないのか、それともそれを問い質す質問を見付けられないでいるのか。
「だから俺は、時々天啓を受ける。
女神様から、『逃げろ』と警告を受けた事もある」
そして、俺は続きを言い放つ。
「レベル5は雑神様。忙し過ぎて、放置すると過労死しかねないが、手抜きのテクニックを鍛え上げて突破すれば、レベル6になる。
レベル6は、女神のレベルにして、『お代理様』のレベル。
レベル7は、神様のレベルだ。故に生者には一時的にしか到達出来ない。
そして、一般的にはレベル1と3は瞬間的に通過するレベルで、『レベル3』かと思ったら、実は『レベル5』だった、という事故も起こり得る。
故に、『雑神様』として、実は死ぬほど忙しかった~(過去形)。と思っていたら、女性なら、『女神様』のレベルとして一人前だが、男性の場合、『お代理様』として、『レベル6』状態であったという状況はまま有り得る。
常に『レベル7』状態の人間が居るとするならば、それは宗教の教祖や、法皇レベルの人間だろうな。
ともかく、通常の人間の到達するレベルではあり得ない」
そこまでは一気に説明した。
それから、多少の時間を質問の受け付け時間として待ってみた。
「ゼロさんは、何を根拠にそんなことを………」
ナナさんは切り込んで来た。
「『お代理様』として任命された経験があるからだ」
「何の『お代理様』なのか、因みに伺っても?」
「そりゃあ『神様』だろうな。
そして、『女神様』サイドの番から、『正解』の唯一つの可能性を除いてそれ以外全ての成功の可能性を放棄させる命令を受けた。
そして、俺はその『唯一の正解』探しの旅に出た。
………結果、死に場所探しの旅に成り下がった」
「………ゼロさんの番は、何故、そんな命令を下したのですか?」
「知らねぇよ。どうせ、こんな奴の番になるのがよっぽど嫌だったんだろ。理由も見当が付くが、俺としてもその理由なら、そんな番はお断りだね!
つうか、成功者がそれ以上の成功者たる男以外を断るのは当然だと思うが、その土台にも唯一の正解を当てる以外の手段以外で上がることを禁じるのは、相当に傲慢だと思うがね!
そんな心の狭い番などお断りだよ!」
「………その方は、『女神様』の『お代理様』なのですか?」
その問いには、一応の結論は出ているものの、仮説の段階でしか無かったので、「仮説だが………」と断りを入れてから切り出した。
「恐らく、女性の『レベル6』は、『お雛様』だ。
そして、女性は『レベル6』で完成する!
女性の『レベル7』は、恐らくは達成実績が確認されていない。
ソレの証拠に、女性の宗教の教祖は、俺の知る限り、存在が確認されたという情報を俺は知らない」
「ゼロさんは、何らかの宗教の教祖なのですか?」
「………」
コレも、答えづらい質問だ。
「………俺も、残念ながら、宗教の教祖だ。
が、コレは余りにも極端過ぎるし、リヴァイアサンの魔女からの要望を叶えるべく、作られた宗教的な側面が強い。
コレを広めて居ないのは、呼吸一つすら罪であり、凡そ人の行い全てが罪であると云う極端過ぎる教えであって、特殊な性癖の女性の為にある的な教えだ。
コレ以上は省く」
「では、ゼロさんには『レベル7』たる資格があるのでは無いですか?」
「一時的には、そうだった。
しかし、一度、明らかにレベル不足を指摘された経験がある。
因みに、レベル5以上の領域への到達を、俺は『開眼』と名付けている。
たまに、『悟天』と言い張って、レベル6への到達を拒む奴も居るけどな。
ソイツは多分、過労死するだろう」
「………『開眼』には、どうやって気付くのですか?」
「『やけに忙しいな』と思ったら、『開眼』が近い可能性が高い。
因みに、コレは精神のレベルであって、肉体のレベルじゃない。
双方共に上げたいが、前衛の二人は肉体レベルを、後衛が………俺も含めたら5人も居るのかよ、バランス悪いなぁ。そう、後衛は精神のレベルを上げて貰いたい」
そうは言ったものの、前衛を増やしたいなと思っていたのは、少しの間、課題として残しておこうと思った。
次話から多分、少しずつ遅れます。




