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第29話

 翌日。

 またもナナさんとロクちゃんを連れ、宝飾品店へと来た。


「いらっしゃいませ」


 昨日と同じ人が対応してくれた。話が早そうで助かる。


「昨日の残りの品ですね?」

「ああ、ウム。そうなのだが………」


 昨日、確認し忘れた書状を取り出し、封を開けてもらう。


「ああ、やはり、商品取引上限撤廃書状のようですね。

 期限は一年限りですね」


 俺も見せて貰うが、書状の正式名称が矢鱈と長ったるく、全部を読むことはしなかったが、発行日と期限日だけはちゃんと確認した。


 ならば。


「昨日の宝石は、売却の予定は立っているのかな?」

「はい、懇意(こんい)にしているお客様に、買取希望が約束済みでございます」

「では、まずダイヤモンドを見ていただこうか」

「ダイヤモンド、でございますか………」


 おや?顔色があまり良く無い。

 コレは、他の宝石にしようかと迷いながらも、ダイヤモンドを取り出した。


「そ、それがダイヤモンド………?!」


 おや?顔色が喜色満面だ。


「──コレは、カットをどうやって!?」

「いや、ソレを教えたら、コレの価値が下がるでしょう」


 やはり、世界最硬の宝石だ、カットをどうやったのかは、気になるだろう。


「そっ、そうでございますよね。

 ………コレは、値付けが厳しい。

 たっ、試しに、言い値で金額を付けていただけませんでしょうか?」

「そうだな………。

 金貨1000枚」

「よ、よろしいでしょう。お支払い致します故、少々お待ちを。

 ………ちなみに、多少お値引きしていただく訳には………」

「そのダイヤモンドの持つ価値が引き下げられる事をも意味しますが、本気で値引いて欲しいとでも?」

「そっ、そうでございますよね。

 では、少々お待ちを」


 正直、もうちょい吹っ掛けても良かった。

 だが、今回限りのトレードにしたくなかった。

 それが故の、金貨1000枚だ。


 一つ、現物があるのだ、再現を試すこともするだろう。

 小粒のダイヤモンドを仕込んだヤスリで削るという手法にも、いずれ気付くだろう。


 ナナさんとロクちゃんの方を見る。

 今日はプリンを食べて貰っている。カラメルソースや、ちょっとした気泡を気にしなければ、そんなに作るのは難しく無い。

 子供に静かにしてもらうのは、そんなに簡単なことじゃない。

 美味しいお菓子を食べさせる事は、ソレを可能にさせる手段の一つだ。静かに食べることを条件にする事で。そして、ロクちゃんには既にソレに従う事の価値を知ることが出来る知能がある。

 ナナさんに何かを耳打ちしているが、恐らく「美味しいね」とでも伝えていたのだろう。ナナさんの笑顔は、ソレを肯定する情報として、十分にソレを確信させる。


「お待たせ致しました」


 金貨1000枚にもなると、台車に載せて運ばなければ、一度に運べる重さでは無かったようだ。台車に袋分けして運んで持ってきた。


「一応、白金貨という物もございますが………」

「スマヌが、使う機会が無いが故に、価値が分からん。

 全て金貨でいただこうか」

「白金貨は、一枚で金貨100枚に匹敵する価値がございますが………。

 それに、全て金貨では、流石に重過ぎるのでは?」

「いや、その心配は無用だ。

 金貨100枚が10袋といったところか?」

「はい。

 何でしたら、ココでご確認頂いても………」

「フム………」


 密かにメソッドを展開!インスタンス、俺!引数、金貨!


「いや、間違い無いだろう」


 一応、幾つか袋を開けて、中身をザッと見るフリをして、メソッドで金貨を計数したが、枚数に間違いは無かった。


「ダイヤモンド、納品願いたい。

 引き換えに、代金を頂く」


 店員は、(うやうや)しくダイヤモンドを手に取る。


「品物、確かに」

「では、コチラも代金を確かに」


 そう言って、袋を異空間にポンポンと放り込んで行く。


魔法の収納袋(マジックバッグ)………!!」

「確かに代金、受け取った。

 コレは土産だと思って、受け取って欲しい。

 菓子だ。今日中に召し上がっていただきたい」


 異空間収納に関しては、勝手に勘違いしてくれたが、謝礼というか、アレだ。袖振り合うも多生の縁、土産に菓子を4人分位、コピペして見栄えの良い袋に入れたものだ。


「あ、ありがとうございます!」

「ではな。

 おい、ナ──」

「お待ち願います!」


 二人を呼び寄せて帰ろうと思ったが、店員に呼び止められる。


「昨日のルビーとエメラルド。買い取らせていただけませんか?」

「………別に構わないが。

 ああ、そう。真珠も、無理な数で無ければ、未だ売れるが、ソチラの希望を聞きたい」

「真珠も………でございますか。

 でしたら、各77個、というのは流石に無理な話でございますよね?」

「在庫としては、ある」

「──金額次第、という事でいらっしゃいますか」

「そうだな。

 だが、昨日の金額から、多少値引いても構わない」

「それだけの数、買い揃えるのは相当困難であったのではと思いますが………」

(いや)、昨日の金額より多少値引いた程度であれば」

「──(やぶさ)かではない、とおっしゃいますか」

「ウム」


 そう云って、ルビーとエメラルド、真珠を箱入りで取り出した。


「真珠の方、計数しても?」

「ああ、構わない」


 全て、数はオーバーしている筈だ。ほんの、2個か3個という程度で。


「んん?」


 気付いたか。オーバーした分をトレーに弾いている。


「失礼。いえ、全て数がオーバーしていたのですが、コレはまさか?」

「ああ、幾つを請求してくるか、予想しかねて、仕入れた分を丸っきりではないが、必要最低限はキープした上で、放出させていただいた。

 ああ、サービスだ。数に数えなくても良い」

「コレだけで、金貨770枚程度は確実に。

 ルビーが金貨80枚、エメラルドが金貨70枚としても………」

「ああ、ならば全て合算して、金貨700枚で構わない」

「それがですねぇ………。コチラとしては、白金貨で支払いたい都合がありまして………。

 流石に、昨日の今日で金貨1700枚も合計で用意するのはコチラとしても大変な手間でして。

 ………白金貨6枚ではご不満でしょうか?」

「ああ、余計な駆け引きは不要だ。

 白金貨7枚で如何(いかが)か?」

「そうですね。そこいらが落とし所でしょう。

 代金、用意して参ります」


 そこからは、疲れてどんな取引をしたのか、正確には覚えていないが、無事に商談を終えて、土産も渡し、二人を連れ帰って、よし、次は護衛の鍛練だ!と思った事は覚えている。


 即ち、次の目的地は、魔獣の森近辺の都市だ!

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