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第22話

「どうしてこうなった………」


 俺はステータスの魔力が∞になったのを眺めながら、手元に浮かび上がったステータス・ボードの魔力、その∞の文字を弄っていた。

 もう、二度と戻らないのだろうか………。

 確かに先程迄は、俺のステータスはゼロだった筈だ。

 より正確に言うならば、『0/0』だった筈だ。

 未だ、魔法を使うのに、魔力を消費しない事に違いは無い。

 だが、∞の魔力を消費するには、やはり消費魔力が∞の魔法を使わねばならない。

 一体、何故、こうなってしまったのだろうか………。


 ココに至るまでには、少々時を遡らなければならない。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「ゼロさんの魔力って、本当にゼロなんですか?」


 ナナさんの質問には、こう答えるしか無い。


「ええ。本当にゼロですよ?」

「ステータス・ボード、見せていただく訳には………」

「別に構わないよ?」

「ええっ!………本当に?」

「ホント、ホント。

 ほら」


 見たがったので見せたら、ナナさんがドン引きした。


「強いとは思っていましたけど、そんなに桁違いとは………」

「………見たいの、魔力じゃなかったの?」

「あっ、そうでした。

 ………ホントにゼロだ。

 でも、『0/0』って表記が妙ですねぇ」

「何で?上限と現在値を表記するのは、普通でしょ?」

「私のステータスも見てみて下さい。

 どうぞ」

「………ホントだ。現在値なのかな?上限値なのかな?」

「恐らくは現在値です。

 ちょっと、消費してみますね」


 そう言って、ナナさんは当たり障りの無い魔法で魔力を消費した。


「………ホントだ。減った」

「私は、コレが当たり前だと思っていました。

 うーん………ゼロさん、ちょっとステータス・ボードに触れても良いですか?」

「良いけど、何で?」

「ココに、違和感を感じているんです」


 そう言って、ナナさんは俺の魔力の『0/0』の部分を、左右から指で押し寄せた。


「ん!………やっぱり!

 ホラ、ゼロさん。コレ、3つで1つのステータスを表していたみたいですよ?………って、え?」


 ナナさんの操作で、俺の魔力は『∞』になってしまった。いや、見た目は似ているけども!


「ど、どうしよう………、元に………戻った!」


 ナナさんがステータス・ボードで指で魔力の辺りを左右に引き剥がすと、再び『0/0』に戻った。


「良かった〜、不可逆の変化じゃなくて。

 でも、何で変化するんでしょうか?」

「何でだろうね?

 俺にとっては、大差の無い事だから、気にも止めないけれども。

 ただ、回数制限があったら、どっちかに固定されちゃうかもねぇ」

「回数制限………はっ!そうですね!

 どっちで止めておきますか?」

「ん?んーーー、『0/0』で」

「………ゼロさん」


 俺は、泣き出しそうな顔のナナさんを見つめ、言葉を待った。


「元に戻りません………」

「………は?」


 ステータス・ボードの魔力は、『∞』になっていた。


「──は?」


 そして、冒頭の言葉に続く。


「どうしてこうなった?」


 ──と。


 操作回数を確かめると、3往復半とのこと。つまり、操作回数は──7回。


「ココでも神の数字か!」


 恐らくは、全ての数字には、対応する概念がある。『7』の場合、『神の数字』だ。『6』は『女神の数字』、『777』は『最もお目出度(めでた)い数字』、『666』は『サタンの数字』、といった具合にだ。


 何故、『女神の数字』が3つ重なると『サタンの数字』なのかは、イエス・キリストにしか分からない。

 ただ、花札の『オイチョカブ』で言えば、『666』は『牡丹のアラシ』、強い方から2番目の役だ。

 つまりは、2番目に強い奴は駄目という事だろう。どうせ強いのならば、『333』の『桜のアラシ』、最強たれと言うことだろう。

 極右(悟空)は良くて、左端(サタン)は悪い。

 サタン以外は『All right』という事だ。


 まぁ、過ぎたことをどう言っても仕方が無いが、サタンはイジメられればイジメられる程、運命的に強くなる。そして、世はサタンのイジメ過ぎで滅ぶ。恐らくはハルマゲドンでも起こるのだろう。


 今現在、『水暴走』の真っ最中だ。因みに、壬辰(みずのえたつ)は、1952年だ。ついでに言えば、2022年は壬寅(みずのえとら)だ。コロナ禍と言える状態になった2020年は庚子(かのえね)だが、『かのえ』は『金の兄』とも表現される事もある。『(きん)』と『(きん)』の同音異義文字の一致は、偶然とは思えない。


 ともかく。


「何でもかんでも神の数字や女神の数字にすれば良いというものではないぞ?」


 しかし、神の数字や女神の数字による支配力は、かなり強いのだ。

 無意識に使っている状態から、意識的に使うようになった場合、ある半可臭い奴のせいでソレではないと言わざるを得ないが、代わりに、俺がソレを『開眼』と名付ける事にしよう。

 極端な場合、雷に打たれたような衝撃を受けることを伴う。


「しかし、コレはどうしたら良いものかねぇ………」


 今現在の課題は、『∞』という大き過ぎる数値の魔力の処理だ。

 人に知られたら、どういう反応が返ってくるのか、空恐ろしいものがある。


 まぁ、ステータスなど、滅多な事で人に見せることは無い。

 しばらくは、放置で良かろう。


 と、この時の俺は思っていた。

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