第18話
翌朝。
昨日の四人に絡まれないよう、早朝に朝食を摂って出立した。
馬車馬は、異空間では仮死状態だった筈だ。深い眠りに就いていたのと似たような状態で、疲れは取れている筈だ。
問題は餌だ。
それについては、各所に設けられた休憩所で補う。
有料だが、銀貨1枚程度だ。
金貨で支払い、釣りを貰うが、銀貨7枚。
「もうひと声!」
そう言うと、銀貨が2枚差し出され、「これ以上はもう出せないよ」と言われた。
馬車馬用に長い水桶もあるし、飼葉もある。
馬の食べ放題飲み放題のようだ。
「塩や砂糖は十分にあるかい?」
「アンタ、行商人か!?」
「路銀稼ぐ程度にね。
入れ物を持ってきてくれたら、出すよ」
「………値段は?」
「量にもよるが、各銀貨1枚程度で」
「少々待ってくれ」
彼らのようなココの管理人は、この近くに住み、旅行者への支援もしているのだ。
彼は、小瓶を2つ持ってきた。
手を翳かざし、まず「塩」と言って塩を満たした瓶を返し、次に「砂糖」と言って、砂糖を詰めた瓶を満たす。
「代金だ」
味見をした彼は銀貨2枚を差し出してくるが、俺は銀貨2枚を取り出して見せ。
「もう貰ってるよ」
そう返す。
そう、彼らは俺たちにとって、重要人物なのだ。粗末には扱えぬ。居なければ、旅が出来ん。
「その金で、酒を買う気は無いか?」
「酒!?待ってくれ、瓶を持って来る」
彼が持って来たのは、空なら何とか持ち運べる程度の重さのある大きさの瓶だった。
「今度はホントに銀貨2枚貰うが、構わないか?」
「半額先払いだ」
渡された銀貨1枚を仕舞うと、一つ質問をする。
「弱い酒と、強い酒、どっちが良い?」
「強い酒を頼めるのか?!
量は?」
「どっちでも、瓶に一杯に注ぐよ」
「なら強い酒で!」
「了解」
異空間内で、コピペを繰り返して注ぐ。
………うん、2・3ヶ月は保つだろう。
「味見して良いか?」
「酔うまで飲むなよ」
「舐める程度で十分さ」
彼は人差し指を突っ込むと、それをそのまま口に含む。目がカッと見開かれた。
「凄ぇ強え酒だ!
ありがとよ!代金だ!」
そう言って差し出された銀貨は、素直に受け取った。
恐らく酒は、彼にとって重要な娯楽だ。
良いことをした。………と思いたい。
「ちゃんと割って飲めよ」
「ああ、そうする」
意外に力持ちのようで、彼は瓶を抱えて持ち去った。
そろそろ、俺たちも出発したい。
ナナさんは………と。馬に付き添っていたようだ。
「ゼロさん。この子に名前を付けてあげても良いですか?」
「どうぞ」
「じゃあ、『紫』、よろしく頼むわね」
………。牡馬なんだけど、良いか。
俺は心の中では、『紫(村裂き)』と呼ぶことにしておこう。
うん、村怖い。
世界中にあんなにもの犠牲を出すほど強く恨めるんだから。
もう二度と関わらないで済むことを願う。
山の不動産も怖い。
………え?意味が分からない?
きっと気付ける時が来るさ。
まぁ、俺は村からも山からも、野からも表からも恨まれ、呪われているのだろうが。
だから、お互いに社会の表に出て活躍は出来ない。
残念だが、世界を底から支えるしか出来ない。
ああ、何の柵も無く活躍出来る奴が怨めしい。
ああ、俺が『悪かった』よ。修学旅行の真っ最中に、夜部屋に一人で、『怒り』の余り熱を出して寝込む程度には。
恐らくあの晩に、俺がサタンである運命が決め付けられたのだ。
フンッ、皮肉だな。その結果、俺が旅行者になるなんて。
英語にしたら『サイトシーイング』かよ。
全て、こうなるように仕組まれていたのかよ。
やっぱり、滅べ世界。
一度、全く違う世界が構築されないと、俺は救われない。
最善でも、生活保護を受けるのが精一杯だ。
恐らく、その前に死ぬが。
つうか、キ◯◯ト教徒が大挙して押し寄せ、俺を公開処刑にする筈だ。
だから、俺が死んだら、暴れてくれよ、シヴァ、ヴィシュヌたち破壊神共!
俺という概念は、超巨大恒星の中心で喪失するのが相応しい。
二度と存在しないでくれよ、俺。




