第13話
朝目覚めてから、口を濯いで朝食を食べに行き、砂糖の問屋に出掛ける。ナナさんも付いてくるようだ。
場所は商業ギルドに行った際に、塩問屋、砂糖問屋、酒問屋の3箇所は場所をついでに聞いておいたから、問題無かろう。
聞いた通りの場所に、砂糖問屋はあった。
「スミマセン」
「何じゃ?」
問屋の従業員らしき、一人のお爺さんに声を掛けた。
「砂糖を買い取って欲しいのですけれど」
「はン!問屋に卸せるだけの量を持っているとは思えんがねぇ」
「大きな瓶でも良いから、入れ物を用意していただければ」
「まず、持っているところを見せてみよ」
「では」
右の掌を上に向け、そこに砂糖を落ちない程度に作ってみせる。
「この通り」
「………魔法で収納しておると言う訳か。
ちょいと待ちな」
お爺さんは従業員に指示して、瓶を持ってこさせた。
塩問屋の瓶よりは小さい。
「コレに十杯で金貨10枚で引き取っていただけますか?」
「いや、金貨7枚だな」
ココで、まずイラッと一回。
我慢して、瓶に砂糖を満たす。
「コイツは仕舞って、次の瓶を持って来い!」
そうして、10回繰り返した時に、お爺さんが更に瓶を持って越させようとしたので。
「10瓶詰めたと思いましたが?」
「は?まだ7瓶じゃろう!」
ココでまたイラッと。
別に、爺さんがボケている訳では無さそうだ。作為的なものを感じる。
更に3瓶詰めて。
「次で最後じゃ!瓶をもう一つ持って来い!」
また1瓶誤魔化して来た。
またイラッとした。だが、まだ我慢。
「コレで全部ですが、代金をお支払い願いたい」
「そうじゃな。
試してみたところ、お主は大量の砂糖を持っているのではなく、どうやら砂糖を作れるようじゃ。
ならば、このくらいが相当じゃろう」
そう言って、金貨1枚を放り投げてきた。
俺、十分我慢したよな?
仏の顔も3度までと言うよな?
俺はその金貨を足で踏み躙って、立ち去ることにした。その金貨に、時限式のメソッドを埋め込んで。
爺さんがその金貨を拾ったのを、気配で感じながら宿へと帰る。
砂糖というのは、燃える。
それが空中にバラ撒かれた状態で、火が点つくと、爆発する。粉塵爆発という奴だ。俺が宿に着いた時点で、遠くからボンッという音が聞こえた。
今後、このような儲け方は辞めよう。敵を作るのみだ。
爺さんの命がどうなったのか、俺は知らない。
宿に着いてすぐに、宿屋に発つことを断り、馬車を代金と引き換えに引き取り、旅立つ事にしたのだが。
大きな街だったので、ココまではしたくなかったのだが。
俺の預けた馬は、こんな老馬だったか?!
そんな疑問を持ちながらも、確実な悪意を感じて、街を少し出てから、今度は馬と馬車を少し浮かせて。
メソッドを展開!インスタンス、俺!引数、あの街!
「震えろ、大地。マグニチュード7!」
震えは感じないから大丈夫だと思ったのだが。
ナナさんは御者席の隣で俺に抱き着いてきて。
馬も浮いていなかったら暴走しているところだった。
前回同様、恐怖感を麻痺させる必要があったか。
メソッドを展開!インスタンス、俺!引数、馬車馬!
「落ち着け」
馬が大人しくなったところで、次の宿場町を目指す。
道中で、ナナさんが言った事があるのだが。
あの大地震を起こすのは、もう止めて欲しいと言われた。
確かに、イチイチ事に及ぶのも何だし、被害者が多過ぎる。
かと言って、泣き寝入りするのは嫌だし、何らかの対処を考えておこう。
呪いは返ってくるので使いたくないし、思った通りの呪いが作用する訳ではないのだ。
そもそも、呪いを掛けるつもりは無かったのだ。
いずれも、もっと上位の能力を持っている人から、間接的に呪いを発動するトリガーだけ引かされているのだ。
元友人から、「頭が『悪い』」と決め付けられたのも、影響が大きいだろう。アイツは、分かっていてトリガーを引いた。
一挙手一投足に気を付けねばならぬが、気付くのはいつも結果が出た後なのだ。
拙速で動いているのも、恐らく文字通り『拙い』のだ。
本当に一挙手一投足を気を付けるならば、現時点でも問題を感じるが、対処の術が思い付かない。
何しろ、『の』の一字を使うことすら拙いのだから。特に、『のだ』と続くのが悪いと分かるのだが、ソレが何にどう悪いのか、分からない程に俺の頭は『悪い』のだ。
なら、勉強しろという話になるだろうが、勉強するだけではお金は稼げない。
結局、俺は自分の為に、自分の出来ることから始めるしかないのだ。
今は、この旅に意義を見出し、何らかの結果を残せること。
でなくば、この旅に出たことそのものが無駄になる。
面白可笑しい旅になれば、それだけでも重畳である。
だが今、俺は俺の旅がつまらない旅になってしまう予感がしている。
やはり、可能性はゼロなのか。
何処かに可能性は無いのか?!………無いから、こうなっているんだよな。
とりあえず、次の宿場町に着くと馬車を預けて先払いで銅貨数枚を渡し、宿を取る際に、ナナさんに確認してダブルの部屋を取った。
今回の交わりは、俺にはとても虚しいものであった。




