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 パソコンに向かい続けているうちにずり落ちてくる眼鏡を直す。

 両手の親指の付け根を使って、丁番のあたりをくいっと上げて直す。こめかみのあたり、フレームとつるのつなぎ目のあたり。

 このあたりを掌でくいっとあげる直し方が、いつしか癖になった。

 たぶん、何かの漫画のキャラクターに影響を受けている。海賊の奴だと思う。

 中指を使ってアーム部分を持ち上げるやり方もカッコいい。だけど、眼前に迫る自分の手に、少し圧迫感を覚える。だから僕は、両脇から優しく眼鏡を直す。


 仕事に集中するぞという時に、よくやっている気がする。まぁ、本当に気合が入っている日は、朝からコンタクトなのだけれど。

 

 異世界に飛ばされたときに、この癖のせいで戦いに負けることがあるだろうか。

 世界の命運を賭けた戦いの中で、ラスボスと戦っている時に、この癖によって生じる隙を突かれて、負けてしまうようなことがあるだろうか。

 確かに、片手に剣を持っていたならば、このやり方では時間がかかる。ならば僕は、これからアーム部分を持ち上げる方法で、眼鏡を直そう。

 そして逆に、相手の隙をつくために、癖を見抜こう。例えば攻撃は必ず右から来るとか、優勢になると油断するとか。

 じゃんけんではいつも最初にチョキを出すとか。

 

 スカート短いのにテンションが上がると飛び跳ねちゃうとか。

 その癖は見抜いても、相手には教えない。当たり前だろう?

 どうやってテンションを上げてやろうか。とにかくそこに集中する。


 何か閃いたときや得心したときに、左手の拳で右手を叩く友人がいる。昭和かと周囲にからかわれている。何かを伝えたいのに言葉にならないとき、こちらがくみ取って「こういうこと?」とまとめてあげると、「そうそう!」と言って、人差し指を立てて振る。機嫌がいいときには左右に揺れる。そんな癖を持つ友人がいる。

 分かってくれてありがとう。そんな笑顔で人差し指を振る。その動作が可愛くて見たくて、僕は君の気持ちを推量するようになった。左右に揺れているのが嬉しくて、君を喜ばせたいと思った。コピーするつもりはなかったが、いつしかその動きは僕にも移った。僕がその癖を見せると、君は吹き出して笑っていた。時々二人で、ベンチに座って、並んで揺れた。音楽も何も流れていないけど、何か温かいものが流れていた。君に会いに行くとき、僕は眼鏡ではなく、コンタクトをする。

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