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かげおくり

ひがな一日、道端に立っている仕事をしていた。

人通りのほとんどない道で、ごく稀に通る車や歩行者を視線で追いかける。

初夏の暑い日、自分の影がアスファルトに映る。


影。陰。

影使いという存在がよく創作物にでてくる。

たいがいクールでカッコよくて知的なキャラクターな気がする。


僕も影使いになりたい。

主人公ではないけど女性人気ダントツの影使いになりたい。

冷静な影使いとして戦いの引き際を弁えながらも主人公の熱さに感化されて勝算無視した戦いに挑んで気持ちで勝利するみたいなギャップを見せつけて人気を得たい。


本心は相手の影を操ることで相手自身も操る能力であんなことやこんなことをしたい。

言葉ではあらがってるけど、ほら、影は正直だよ……。

熱さで頭がどうにかっているらしい。ここには影が無いから。


影と陰の違いは、物体に遮られて日光が当たらないところが「影」で、何かの裏とかで隠れているところが「陰」ということだったりするらしい。厳密には調べてほしいけれど。


影使いになれなくても。陰使いではあるかもしれない。

家のいたるところの陰にいろんなものを詰め込んでいるから。

とりあえず見えなければいっかの精神で部屋を片付けているから、うちの陰にはいろんなものが隠されているし、見えなくするための陰を見つけるのはお茶の子さいさいだし、なんならどこの陰に何をしまったのか忘れたりするんだぜ。

悲しい能力だぜ。


自分の影をじっと見つめて、そして一気に青空を仰ぐ。

自分の影と同じ形をしたぼんやりとしたものが空に映る。


小学生の時に、国語の時間に『ちいちゃんのかげおくり』(著・あまんきみこ)を読んだ。詳細なストーリーは忘れてしまったが、悲しい話だったことは覚えている。

その作品を読んだ後、クラスのみんなでかげおくりをやってみる時間があった。

みんなが「できた」「みえた」という中、僕は全くできなかった。悲しい気持ちだったことを覚えている。

大人になってもその時にできなかったということはなんだかずっと覚えていて、悲しいけれど誰のせいでもなくて、みんなは見えたと喜んでいて楽しそうで、自分はできなかったということ自体と置いてけぼりになったようなことで多分結構、深い悲しみだったんだと思う。


大人になってできるようになって、それからも時々空に影を送っているのは、子どもの頃に出来なくて悲しかった気持を埋めているのかもしれない。


子どもの頃は、自分の黒い影が小さく空に映るのだと思っていたけれど、実際にやって見えた影は薄いオレンジ色で、地面に映った影がそのままのサイズで空に映るので、思っていたよりバカでかく見えて、空にいる巨人のようだった。


いつか影じゃなくて本体が空に行くのだろうけれど、そうしたら地上の子どもたちをしっかり見守ってあげようと思った。


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