1章 7話 『小さな夜(後編)』
「万魔殿、崩壊、しました」
天使長の神殿の中、レミエルは帝にそう告げた。
「……そう、か」
「悪魔の反乱は未然に防がれました。……ですが、天界全体の戦力は大幅に減少、まともな戦力は、もう……」
帝もレミエルも、もう限界だった。今まで戦ってきた。長い時を戦ってきた。悪魔との交流も人間との交流も、今までずっと怠ってはこなかった。
それなのに、今、天界は滅びようとしている。
「……天使長様。もう、無理ですよ。……これ以上は無理なんですよ。こんなことやめましょう。あ、そうです、下界に降りてでも生きましょうよ! 私と一緒に!」
涙を流しながら、自分の本心を伝えるレミエル。
しかし、そんな彼女の本心を聞いた帝は声を荒げて叫んだ。
「私は、私だって、逃げたかったさ! だがそれをして何になる!? ここの天使たちはどうなる!? 全員が死んだわけじゃないんだ! こんなところで、長たる私が1人で、尻尾を巻いて逃げられるわけがないだろうっ!」
感情を爆発させた帝を前に、レミエルはただ涙を流すことしかできなかった。
「わ、私は、ただ……ただ……!」
「――レミエル。逃げるのならば、お前だけ逃げろ。幻視を使っても、何を使っても構わない。ただ逃げろ。死ななかったらそれで勝ちさ、世界は」
「っ、嫌、です……。だってそうしたら、天使長様は……!」
彼女が言い終わる前に、帝は彼女の体を光弾で吹き飛ばした。
衝撃でレミエルは床に叩きつけられる。強すぎたか、と思いながら、帝はレミエルに近付く。
「無理矢理にでも、お前だけは……」
レミエルだけでも逃がすため、転移術を使おうとする帝。
それでもレミエルは抵抗する。帝の腕を掴んで、2人で脱出しようとその腕を引く。勢い余って立っている帝を押し倒す。
2人の互いを思う心が、優しさがぶつかり合う。
レミエルはこれだけ近くで帝のことを感じられることに1種の幸福感を覚えていた。
対する帝は、1人でも多くの天使と悪魔を生存させたいという天使長としての立場ゆえの思いに打ち勝ってしまいそうなレミエルへの想いが邪魔だった。
自分を愛してくれている、そんなことはとっくの昔からわかっていた。そして帝自身、レミエルのことを愛していることもまた事実だった。あの時、ハシュマルを見捨ててレミエルのもとに駆けつけたのだ。ハシュマルではなくレミエルを選んで、帝はこの場にいるのだ。帝はレミエルを間違いなく愛していた。
「でも、だけど……僕の立場は天使長なんだ! 逃げられないんだよ。そして、この道を選ばせたのはお前だろう、レミエル! だったら、進み続けるしか……!」
天使の、そして悪魔の皆のために。そして下界のために。
――世界平和の為に?
私はいつから、そんな綺麗事に踊らされるようになったんだ?
私が思い描いた天使長は、天界は、こんなんじゃなかったはずなのに。
もっと……
「う、っ」
帝は涙を流す。自身を押し倒すレミエルと同じく、涙を流す。
「だから、私はあなたと一緒にいるって言ったんですよ。あなた1人じゃ何もできなさそうですから」
少しだけ、心地良く感じた。こんな状況なのに、2人ともこの状態を嬉しく思った。
だが、2人の時間は一瞬にして終わりを迎える。
「あれ、あれ、あれ〜? ボクが来たのに、遊ぼうとか言い出せる雰囲気じゃ無さそうだなぁ〜?」
2人だけの時間を破壊したのは、突如聞こえた無邪気な声だった。
「まぁいいや。ボクと遊ぼう、天使長のお兄さん!」
少年とも少女とも測りかねる白髪の子。外見年齢は2桁にも届いていないだろうか、と思えるほどに、小さな子供だった。
しかしこの白髪の容姿から見て、今までと同じく襲撃者で、その襲撃者たちと同じく少女なのだろう。
「早すぎたな、結末は」
最無見帝は戦闘態勢に入る。
「光の翼も、光弾も、今や全ては私のものだ」
本来、片翼は姉のものだったらしい。姉と帝の2人で使うべき翼だった。
しかし、そんなことはどうでもいいか。あの姉はもういないのだから。
「消えてもらう」
「――へぇ?」
光は確かに、少女の小さな体を貫くはずだ。
――レミエルだけは、守ってみせる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ボクはお前たちのどちらもに協力するわけでもないし、わざわざ守る必要もないんだけど……」
アハトの腕部から放たれたビームは、ルシファーが出した闇の障壁によって暗闇の中へと消えていった。
「なんで、私の、邪魔を……! ジーナの仇の邪魔を……するなぁぁぁぁぁっ!!」
「昔の経験から、生命の死は見たくないんだよね」
アハトの怒りの矛先はルシファーに向いた。アハトのスカート裏から伸びてきた、後付けのように不自然な機械製の尻尾がルシファーを狙う。
「ビームに焼かれて消えてしまえぇぇぇぇぇ!!」
スカートから伸びる尾部ビーム砲を使い、アハトは薙ぎ払うようにビームを放とうとした。
『――アハト? それでいいの?』
アハトの頭の中に、少女の声が響いた。
「え? ――ジーナ?」
聞き心地の良い声に気を取られ、アハトは尻尾を下ろした。
聞き慣れた、大親友の声だった。ずっと一緒にいたような、大切な……
『――アハト、私は……』
アハトの頭に言葉が入ってくる。今はもう知ることなんてできなかったはずの想いが入ってくる。
「――嘘だ、嘘つき、どうせ、嘘つき、なんでしょ……? だってそうじゃないと、私……」
アハトは、突然打ち明けられた想いに困惑し、涙を流し始めた。
「……アハトは誰と話してるんだろう?」
ルシファーや第九艦隊の面々にはアハトが独り言を繰り返して、突然泣き始めたようにしか見えない。
『――!』
告げられた言葉は、アハトにしか感じることはできなかった。他の誰にも聞こえることはない。アハトの頭の中の『ジーナ』が想いを打ち明けていた。
「黙れッ! 私のジーナは、そんなこと……、ジーナは……、私で……、頭の中に、入ってくるなァァァァッ!」
頭の中の『ジーナ』に強い違和感と拒否感を覚えたアハトは、半狂乱のようになって叫んだ。
『――アハト!』
「黙れ、黙れ黙れ、黙れッ! お前たちは皆、敵だァァァァ! 早く、早く消えろッ! 消えてしまえ!」
もうアハトには、『ジーナ』の言葉は届かない。今は亡き彼女の本心と自分の想像のジーナとの心情の乖離が、アハトの心をかき乱した。
「ノルン司令、脱出を」
「でもマルク、私が退けば艦隊は……」
錯乱したアハトは身体のあちこちに装備されたビーム砲を乱射する。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲痛な叫びをあげるアハトは、周囲のすべてを破壊せんとする。
艦体は損傷し、地上にまで被害が広がっていく。
ルシファーはアハトによる無差別射撃を回避しながら、戦艦アルフレートのもとへ退避した。
「えーっと……、ルシファーさん、です? 何のためにアルフレートに……あ、ちょ、艦内に無理やり入られるのは困るんですけど、あなたの闇でワープするとか……え? あの、距離が近い……です、ちょっとこれは、こういう距離感は、私の心がおかしくなってしまうん……ですけど」
ブリッジまでの闇のゲートを繋いでワープしたルシファーは、ティルに耳打ちする。
「――なるほど、そういうこと……ですか。了解、です♪」
ルシファーを乗せた戦艦アルフレートは戦艦ビスマルクから距離を取った。そして、ティルはルシファーの企みに乗り、各砲座に砲撃の用意をさせた。
ルシファーが離れた戦艦ビスマルク付近の空域は酷い有様だった。
自身が着けるネクタイをその手で握ったアハトは、戦艦ビスマルクの艦体を突き刺す。
「ノルン……! ノルンーーーーッ!! お前さえいなければ、お前たちさえいなくなれば!」
アハトのネクタイは異常な強度を誇っている。機械すら容易く貫通し、人間に対しても内臓を貫くほどの、槍のような鋭さを持っているのだ。
そんなネクタイの先端がブリッジのガラスを突き刺し、アハトは戦艦ビスマルクのガラスを割って侵入する。
「ノルンは……ノルンは? ねぇ、ノルン? ――ああ、そっか。先に皆殺してから……って、ひどい話ね、死にたくないのにね。……でもね?」
アハトは手の中に隠し持っていた錠剤を7錠ほど飲んで精神状態を安定させてから、周囲を見渡す。
「っ!?」
そして、侵入したアハトは手始めに戦艦ビスマルクの副長であるフォンを殺害した。
この状況を危険と判断したマルクは、全員に退艦命令を下す。
「ッ、フォン……、これでは侵入どころの話では……! 総員、退艦せよ!」
アハトが割ったガラスの破片は、クルーたちの体に突き刺さっていた。ガラス付近に座っていた者の中には、顔のあちこちにガラス片が突き刺さり、目も当てられな状態になっていた者もいた。
「逃がすわけが……、――ッ!?」
アハトの視界は、1人の少女の姿を捉えた。軍服に身を纏い、銀色の肩章で身を飾った、第九艦隊の司令官……。
「マルク、退艦して。私はアハトの相手をしなきゃいけないみたいだから、これからの皆の指揮はお願い」
「しかし……! ……いえ、了解」
「ふ、ふふふ、そんなところに、いたんだぁ……? ノルン……?」
マルク含めた戦艦クルーたちは、戦艦ビスマルクから脱出する。ブリッジに残ったのは、ノルンとアハトだけとなった。
「これ以上先には通さない」
「その物言いが気に入らない……! 死んで、消えて、いなくなって。私の前から、私っていうジーナの前から、どこかに行って。早く、さっさと、消えろ、消えろ消えろ消えろ……、ああ、ダメ、安定剤が……、早く飲まないと……」
罵詈雑言を繰り返したアハトは突然ふらつき、目眩に襲われた後、壁に倒れかかる。そして、制服のブレザーのポケットから取り出した薬瓶から錠剤を多数服用した。
「これ以上何かする前に、ジーナと一緒にお前を殺す……!」
薬を飲み終えたアハトは、体勢を立て直してノルンに近付き、その規格外に鋭利なネクタイをノルンに突き刺そうとする。
しかし、その攻撃をノルンは容易く躱し、躱した勢いのままアハトを手で押し、ネクタイだけを器用に制服から外してみせた。
押された衝撃で吹き飛んだアハトは、外されたネクタイがあった場所に手を当てる。ネクタイが本当に自身の体から消えたことを確認すると、彼女はその手を下ろす。
するとそこには、黒色のブレザーから覗く白色の服に無理矢理後から取り付けたような大型のビーム砲が露出した。
「ジーナの分も、ここで死んで? 私がお前たちを殺して、天使も皆殺しにしてあげる。この世界から友情も愛情も全て消すために……、だから、まずはあなたを撃つ。そして、『あの人』も……。だって、それがいいでしょ? ね、ジーナ?」
ノルンに語りかけているようで、実際には虚空へと語りかけるアハトを見て、ノルンは違和感を覚えた。
――会話が、成り立っていない気がする。
自分に向けて話していないのは百も承知だが、ジーナと話しているとしても少しおかしい。
あのジーナが、アハトを大切に思っているはずのジーナが、アハトの立場が悪くなるような行為を勧めるはずもなくて……?
そう考えたジーナは、1つ賭けに出ることにした。
「本当にあなたのその行為をジーナは望んでいた? 『あの人』に反逆する逆族となって、『タイプチャイルド』全体を敵に回すことを、本当にジーナは望んでいたの? それが、ジーナの想いなの? 逆族となることに泣いてるんじゃないか、と思うんだけど」
挑発を含めた、1種の賭け。
過去に得た別世界の情報からも考えて、この言い方が一番の効果を発揮すると考えた。この言葉に似たものが出た別世界の状況と今の状況は大きく違うが、それでもこの言葉はアハトの感情を剥き出しにしてくれるだろう。
そう考えたノルンは、ジーナに関する言葉でアハトの罪悪感を煽りながら、彼女の出方を窺う。
「お前が……、お前が、ジーナを語るなぁぁぁぁぁ!! ジーナはそんな風に思わない! 私を否定したりしない! ジーナは今も私と一緒にいる! お前を殺せって言ってるはずなんだ! 望んでるはずなのに! ――なのに、なんでそんなことを言うの!? ジーナの何も知らないくせに、私のジーナを語るな、お前の主観でジーナを語るな! 私のジーナは私そのものなんだ! 今、私にくっついて離れない腕も、お腹も、尻尾だって、ぜんぶぜんぶジーナなんだから、私自身がジーナなんだ! ジーナは私を否定しないし、私のやることに疑問なんて抱かない! ジーナは私の……! 私はぁぁぁ……、――ッ、 ハァ、ハァ……、また、安定剤が……! もう、なんで!? こんな早くに、ジーナ……、どうしてなの!?」
アハトの悲痛な叫びが艦内に響き渡る。感情の昂りからか、それとも何か別の原因か、アハトは制服のブレザーのポケットから薬瓶を取り出して、狂ったように薬瓶の中の錠剤を手のひらの上にぶちまける。何錠かの錠剤が手のひらからこぼれ落ちるが、どうだっていい。手の震えや意識障害、目眩なども引き起こるが、ジーナのためならどうだってよかった。どうにでもなった。躊躇もせず、手のひらでは到底持ちきれない程の錠剤を一気に服用した。
「うっ……、う、ジーナ……? ああ、見えるし聞こえる。この艦もろとも壊してしまえばいいんだ!」
アハトは空想上のジーナと話し、周囲の隔壁も床も、ブリッジのすべてを破壊するようにビームを一斉射した。
つまり結果は、成功だった。
――いや、失敗だろうか? 挑発によって被害が拡大しつつあるのもまた事実だ。
しかし、1つ確信が持てた。
アハトの言う『ジーナ』は本物ではない。
アハトの頭の中で都合よく捻じ曲げられて、アハトの行動を一切否定しない都合の良い人形、アハト自身が自身の行動を正当化させるための、形としての薬以外の実体を持たない心の安定剤だ。
ジーナはもっと、アハトの身を案じた発言をするはず。アハトの言葉を全肯定なんて絶対にせず、相棒として、親友として、深い関係にある者として、常にアハトに寄り添ったうえで別の手段を講じるはず。作戦参謀のような、後方からの支援を得意とするジーナが前線のアハトを補うという戦闘を常にしてきた2人なのだ。絶対に、アハトの無鉄砲で無策な行動を全肯定などするはずもなかった。
「こんなに撃ってるのに、ビームがノルンに当たらない……、なんで、外れたなんて、本当になんでッ!? こんな時に、目眩も……視界もぼやけるし、どうなって……ッ!」
もはやアハトは、状況の把握も上手くできていない。命中しているかどうかも分からないほど視界はぼやけ、意識は朦朧とし、足元はふらついている。それに追い打ちをかけるように、手を含めた四肢の痙攣が得意分野であったはずの正確な射撃を阻害していた。
そんな状況でも、高密度の弾幕はアハト自身の絶不調をカバーするほどの性能を持っていた。回避しきれないほどの多数の火線は、絶大な威力と制圧力を持ってノルンの動きを封じる。ビームのほとんどは周辺の機械や壁を貫き、爆発や炎上を引き起こすが、数本かはノルンに当たるあたり数の暴力は偉大だろう。
ノルンが着用する黒色の軍服も破れていき、帽子に至っては吹き飛んでしまっていた。
美しいほどに整った白髮がその姿を見せるが、そんな姿の1つ1つも見られないアハトは、射撃の手を緩めない。
「背に腹は代えられない……。K-R-A-Mを射出するしか……」
ノルンはアハトに対抗すべく、銀色の肩章を切り離した。
肩章というのは、所詮は身を飾るためだけのお飾りだ。戦闘に使おうなど思うはずもない。しかしノルンは、あえてこの肩章を『無線誘導兵器』として使おうと思った。
試作型遠隔操作端末『K-R-A-M/MK-0』、所謂オールレンジ攻撃というものを可能とする、空飛ぶビーム砲である。名前の由来は別世界の科学者だが、誘導兵器くらいしか関連性はない。
このクラムと言う武装、オールレンジ兵器と言うだけあって艦内のように物理的な閉鎖的空間では使いにくいが、それでも不意打ちや回避困難な射撃としては効果的だ。
「見えない……、違う、何!? 誰かが、いっぱいいる、私に襲い掛かってきて……、見ないで、何なの!?」
――思いの外、効果的だったらしい。
幻覚が見えているのか知らないが、どうやらアハトの目にはクラム1つ1つが生命体に見えているようだ。
薬の大量接種の効果、恐るべし……と言ったところか。人間とタイプチャイルドでは症状に差異が生じるだろうが、それでも予想外の働きをしてくれる。わざわざ精神安定剤なんてものを全員分造ってくれたフィン様様だ、とノルンは心の中で思うのだった。
「誰……、消えて、落ちて! ……外れた、なんでっ!?」
アハトは小さな的であるクラムを撃ち落とそうと射撃を繰り返し、注意の全てをクラムに向ける。しかし、人の大きさと肩章の大きさは違うものだ。当たるはずもなく、虚空を撃つのみ。
ノルンはクラムに注意が向いている今のうちに、戦場を移そうと考えた。戦艦ビスマルクを脱出し、空中戦に持ち込もうと考えたのだ。閉鎖的空間では使用が限られるクラムを最大限使うならば、広大な空ほど良い場所はない。
「ノルンが1人、いや、2人なの? ああ、何人でもいい、逃がすかぁぁ! ……逃がさない? なんで? なんで逃がさない必要性が……、なんで私は……、ああもう、答えてよ、ジーナ! ――もういい、皆焼いてやる……、お前たちの大切なものも、全部!」
目眩と幻覚に襲われながらも、アハトは戦艦ビスマルクを出て、先に外に出たノルンを追う。
戦場は移り、空中戦となった。
「ルシファーさん、準備はまだ……です? 私、焦らしすぎは好きじゃない……ですよ?」
「別にボクは君に好意だって抱いてないからな!? 誤解を招きかねない発言はやめてくれ!」
「てへ……です♪」
戦艦アルフレート艦内では、空中戦の様子を見るティルとルシファーの2人が何かの準備をしていた。
「もう少しでボクの闇が世界を包み込むほどになるんだよ。だから砲撃はしないでね」
「そうしたら私とあなたは離れるん……ですか?」
悲しそうな視線をティルから向けられるルシファー。
「……考えておくから待っててくれないか!?」
「……優柔不断じゃ嫌っちゃいますよ……です♪」
「本当に黙っていてくれ!」
かく言うルシファーも、久方ぶりに感じた楽しいと思える時間に、少しだけ心を躍らせるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
1人の少女の声が、どこかに響く。誰が聞いているのか、何1つわからない空間の中で。
「――ふむ……、思いの外、深く眠っているようじゃの。まさか他人の状況まで三人称視点で見始めるとは、儂としても驚きじゃ」
「じゃが、夜は終わるものじゃ。明けない夜はない、とはよく言ったものじゃな」
「――しかしこの世界は、もう少しだけ続くがな。お主は一体どうなるか、見物じゃの、帝」
お久しぶりです、天之帝です。長くなりましたし、これでもまだ終わらない『小さな夜』編。まぁ、『小さな夜』というサブタイトルは終わりですが。
9話はもう少し早く出せると思います。はてさて、最後ののじゃ口調の方は誰なんですかねぇ?
追記 あーもう、馬鹿なんですかねぇ? 7話じゃなくて8話って書いてんじゃないですか、頭どうなってんでしょう? えーっと、混乱させたと思いますが、こちら7話です。7.9話の方も6.9話に修正します。こんなミス、二度としないようにしたいですね。気付くのが遅れて申し訳ございませんでした。




