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誰かを守るために


 盗賊でも出たかしらと私が声の方に目を向けると……冒険者風の格好をした四人組が、必死の形相でこちらに駆けてきていた。


 一人はぐったりしたまま肩に担がれているので、かなりの重傷だろうと察せられる。


 そして、そんな彼らを追跡する緑色。

 ゴブリン。それが、3匹。


 3匹くらいなら簡単に討伐できるはずだし、あの冒険者たちは素人かしら? ……いや、今見えるのが3匹だけで、他にもいる可能性は否定できないか。


 よしここは攻撃魔法で援護して――


「――雷よ、我が敵を討て(トニトルス)!」


 私の真横を雷光が走った。


 まだ満足に飛ばせもしないはずのミーシャの攻撃魔法。


 しかしながら、誰かを救いたいという想いが力となったのか、私でも驚くほどの精度で雷魔法はゴブリン目指して飛翔して――、一撃。たった一撃で3匹すべてを倒してしまった。


「え、わ、すごいっ」


 自分自身のもたらした戦果に驚愕しつつ、ミーシャの身体が傾く。そりゃあ今まで練習で魔力を消耗していたところに、高威力の攻撃魔法を放ったんだものね。魔力欠乏症になっても不思議じゃないわ。


 意識を失って倒れるミーシャを抱き抱えつつ、這々(ほうほう)(てい)で逃れてきた冒険者たちを迎える。とりあえず回復魔法で傷口は塞いでおくけれど、精密検査は専門家にしてもらいましょうか。


 一通り回復魔法をかけ終わると、4人組は疲れが一気に来たのか眠るように気絶してしまった。


「う~ん……」


 ミーシャと、冒険者4人組。全員気絶中。


 抱えて町まで戻るのは無理そうね。


 転移魔法は……気絶したケガ人がいるから止めましょうか。意識がないと着地もできないだろうし。緊急事態なら迷わず使うけど、あの三匹以外に敵もいなさそうだしね。


 となると私一人で転移して報告、担架を持ってきてもらうのが一番いいのだけど……気絶した5人をこのまま放っておくのもなぁ。別の魔物がやって来る可能性もあるし……。


『みゃ!』


 私が悩んでいると、『俺に任せろ!』とばかりに片手を上げたクリカラが背中の羽を広げ、領都まで飛んでいってしまった。


 あんた飛べたんかーい。と、一応突っ込んでおく私であった。





 しばらく待っていると、ニッツたちが人を連れてやって来た。誰も彼も屈強な男たちだ。


「おいおい、こいつら確か新人だよな?」


「とうとう素人までボコったか……」


「セナ、やり過ぎ」


「なんで私がやったことになっとんねーん」


 疑うことなく私のせいにするニッツ、ガイル、フェイス君にコテコテのツッコミをしてしまう私であった。


「……いや、待てよ。セナがやったにしては綺麗すぎる」


 そんな私がやったら顔を中心にボコボコにするみたいな言い方、やめてよ。まぁよくボコボコにはするけれど。


「回復魔法で証拠隠滅したんじゃないか?」


 証拠隠滅って。まぁ昔やったことはあるけれど。


「セナ、やり過ぎ」


 いいえやり過ぎではありません。正当防衛です。美少女はか弱いのだからいついかなる時も正当防衛です。……じゃなかった。やってないっちゅうねん。


「ったく、クリカラが騒いでいるからどうしたのかと思ったら」


 そういえば、クリカラは『みゃあ』でしか意思疎通できないものね。残念ながら担架はないみたいだけど、むしろよく人を連れてここまでやって来たというか……。


「クリカラが騒いでいるからな」


「またセナが何かやらかしていると思ってな」


「止めるには屈強な男たちが必要だと判断した」


 仲間たちからの厚い信頼に泣きそうな私である。えーんえーん。


 ま、それはともかくとして。

 新人だという冒険者四人をそれぞれ背負って私たちは領都へと戻ったのだった。




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